仏壇の材質は木材で梅雨や湿気は天敵!
季節に応じたお仏壇や仏具の手入れと注意点
お仏壇の素材は、主に木材が中心です。
そのため、外気の変化にはどうしても敏感になってしまうのは否めません。
また、位牌や各種仏具も木を使ったものが多くなるため、季節ごとの取り扱いを考えながら使う必要があります。
これは、安価なものであろうと、伝統工芸品に指定されるような高級なものであろうと、いずれも同様の傾向を持っており、本州以南は特に梅雨の時期に注意が必要です。
また、四季の変化が比較的はっきりしている北海道や東北地方の場合は、冬場への備えも必要です。
とはいえ、ある程度共通している部分は多く、基本としてはどれだけ水気を寄せ付けずにおけるかが重要になってきます。
今回は、梅雨時や四季の変化に応じた、お仏壇・位牌・仏具のお手入れ方法や注意点をご紹介します。
仏壇仏具において、梅雨時は天敵であり大敵
お仏壇に限った話ではありませんが、木材は梅雨の時期に大敵とするものが、いくつか存在します。
以下に、主なものをご紹介します。
素材や造りにかかわらず最も気をつけたいのが「湿気」
どのような造りのお仏壇であっても、どのような素材を使った仏具であっても、梅雨の時期は「湿気」に何よりも気を遣う必要があります。
本来、木は周囲の温度・湿度に合わせて、空気中の水分を吸ったり吐いたりして湿度の調節を行っています。
これは、切られて木材として加工されても続く性質です。
木材の中に含まれている水分の割合を計算したものを「含水率(がんすいりつ)」と言います。
のこぎりで挽いたばかりの木材における含水率は、およそ40~200%と言われていますが、木材として使用するには強度が足りません。
そこで、お仏壇の材料として使う際には、十分な強度を生み出すために木材を乾燥させます。
木材は乾燥が進むにつれて収縮する特性があり、その分だけ強度が強まっていきます。
仮に木材の含水率を12~15%程度まで乾燥させたとすると、生材の状態と比較して強度はおよそ2倍になります。
つまり、木材は乾燥しているからこそ、その強度を保てるというわけです。
これが梅雨時になると、空気中の水分すなわち湿度が増えることにより、木材は水分を吸収しようと試みます。
すると、お仏壇や木製仏具の含水率が高まります。
長期間にわたり含水率が20%を超えるようなことがあると、木材にも損傷が見られるようになります。
具体的には、カビが発生したり、木材が腐ってしまったりします。
湿気が高いだけではカビなどは発生しませんが、気温が高くなると発生しやすくなります。
そのため、梅雨時のお仏壇のケアは、湿気ひいてはカビや腐敗との戦いなのです。
目に見えないからこそ、目に見えるところを拭く
湿気はそれ自体を見る事はできず、目視で確認するには、湿度計などの数値に目をやる必要があります。
つまり、空気中の湿度を目でとらえることは難しく、お仏壇のどの部位に湿気が集まっているのかは分かりません。
しかし、カビが生える場所は込み入った場所と相場が決まっています。
空気の換気がうまくいっていない場所や湿気がたまりやすい場所というのは、比較的分かりやすいものです。
具体的には、お仏壇の中でも奥まった場所、例えば引き出しや骨壺入れのスペースなど、普段換気をしないようなところにこそ注意が必要です。
湿気を拭き取るには乾拭きが一番です。
棚や引き出しを開けたら内部をさっと拭き取り、余裕があれば扇風機・エアコンなどを使ってお部屋の湿気を取り除きましょう。
乾き過ぎるのも、それはそれで問題
過度な湿気は木材にとって問題を引き起こしますが、かえって乾き過ぎてしまうのも、お仏壇を劣化させてしまうリスクにつながります。
梅雨の時期はエアコンに頼りがちですが、冷風や除湿の影響を直接受けるような場所にお仏壇を安置している場合、風が直接当たってしまう事でひび割れを起こす可能性があります。
木材は乾燥するにつれて強度を増やす性質を持ちますが、あまりに乾燥した状態になると今度は割れが生じてしまう可能性があります。
良い木材は湿気にも乾燥にも強いものですが、やはり度を越した環境では傷みが生じても不思議ではありません。
その他、寒冷地でストーブを焚いているところも、空気を急激に乾燥させるため注意が必要です。
夏場・暑い地域でのお仏壇の対策と注意点
梅雨時の対策についてご紹介したところで、続いては夏場や暑い地域での対策についてお伝えします。
特に、同じ日本でも地域によって、その気候などは大きく異なります。
北海道の夏と、沖縄の夏が大きく違うように、特に沖縄などは文化や環境が他の地域とかなり異なるため、地域性に即した対策を講じることが大切です。
生態系が違うことに注意
日本全土を比較したときに、寒い地域と暑い地域では、生態系に大きな違いがあります。
また、南に行けば行くほど高温多湿の傾向が強まるため、特に湿気に強い素材が必要になります。
沖縄を例に取ると、湿気対策に「チャーギ」という木材を使用するお仏壇があります。
これは沖縄の方言で、イヌマキと呼ばれる樹木のことを指します。
堅くて耐湿性があり、白アリにも強い高級木材として重宝され、実際に沖縄の建築材としても有名です。
また、沖縄は押し入れを改造してお仏壇をはめ込むという文化があります。
電気系統の調整なども場合によっては必要で、安置条件としても湿気に対応できる造りのお仏壇が求められると言えるでしょう。
ロウソクが曲がることも
全国的に猛暑の傾向がある現代において、無視できないのが高温による問題です。
気温が上がることに加えて西日などが部屋に入ると、火を点けていないのにロウソクが柔らかくなってしまうことがあるようです。
ある家のお仏壇に置かれたロウソクは、最高気温が36度を記録した猛暑の日、ぐにゃりと横に曲がってしまったそうです。
ロウソクの形状が変化し始める温度はおよそ40度からと言われていますが、室内は気温と西日の関係で40度を超えていたのかもしれません。
この一件から、その家では夏場の日中は不在時もエアコンを使用することに決めたそうです。
ロウソクに限らず、気温上昇による形状変化は無視できないため、高温化に置いていた仏具の状態は使用前に確認することをおすすめします。
お花が枯れるのは早いと心得る
お仏壇・仏具とは直接関係のない話ではありますが、お仏壇にお供えするお花も、暑い時期と寒い時期では「持ち」が違います。
あまりの高温下だと、3日で枯れてしまうことも珍しくないようです。
このような場合は、やはりこまめにお花を替える必要があると思います。
どうしても予算の都合がつかないようであれば、お花の量を減らしたり、一時的に光触媒の造花を使うなどの工夫は必要かもしれません。
また、特に夏場は枯らしてしまう可能性が高くなりますので、そういった場合は、常花なども考慮しておきましょう。
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ご飯をお供えする場合も、生米でない場合は傷みやすいため、臨機応変にお下げするタイミングを考慮したいところです。
生ものをさばく場合、暑い時期は極力早めに考えておきましょう。
冬場・寒冷地でのお仏壇の対策と注意点
暑い時期のお仏壇対策があれば、当然ながら寒い時期のお仏壇対策も存在します。
特に東北地方から北海道など、寒冷地は夏と冬で気候や環境が大きく変化するため、暑い時期とは違う注意が必要です。
湿気対策として備えるべきは結露
湿気というと、ジメジメして蒸し暑いといった事もあってか、つい夏場のイメージが強いかもしれません。
しかしながら、夏だけでなく、冬場も湿気に注意すべき場合があります。
一般的に、太平洋側よりは日本海側の方が湿度は高くなり、雪も多い傾向にあります。
寒冷地にお住まいの方以外はピンとこないかもしれませんが、雪はつまるところ水蒸気の結晶ですから、解ければ水分は放出されますし、解けなくても部分的に気化は起こっています。
よって、寒冷地・特に日本海側は、冬でも湿度対策が必要となります。
寒冷地域では日中から火を焚いている家庭も多く、その場合はどうしても温度差から窓に水滴がついてしまうと思います。
その他、空気が滞留しやすい押し入れ・クローゼットや家具の裏側なども、結露には注意が必要です。
家屋や家具近くの湿気が行き場を失うと、やがて部屋や家具のシミ・カビを生み出す原因となります。
お仏壇は壁から5cm以上離して置くことを心がけ、お部屋も換気を心がけたいところです。
暖房もある程度有効ではありますが、今度は火事に注意が必要となります。
畳の仏間で火を焚くなら、防災マットの上で火を焚くなど、火が燃え広がらないようにする工夫をしましょう。
窓の雪囲いによる暗さに注意
寒冷地では、家の一階部分がほぼ雪で埋まってしまうほどの雪が降ることも珍しくありません。
雪が積もるとその重みで家屋が破壊されたり、屋根から雪が落ちたその勢いで植木が倒れてしまったり、窓が雪の重みで割れてしまったりします。
特に窓は、割れてしまうと家屋の内部に雪が入り込んでしまうため、窓には丁寧に雪囲い(窓を外側からおおう板のようなもの)を取り付けます。
その結果、仏間自体がかなり暗くなってしまう場合があります。
日光も部屋に取り入れにくく、その分気温も上がりにくいため、総じて湿気の悪影響を受けやすい環境となります。
夏と比較して換気がしにくく、冬場はなかなか窓も開けにくいことから、意識して空気の循環を試みなければなりません。
仏間を閉め切るなら換気を忘れずに
一軒家の場合、あまりに広い範囲をストーブで温めようとすると、その分だけ薪や灯油を消耗します。
そのため、リビング以外の部屋は閉め切り、寝室の扉を眠る1時間前から開け始めるといった工夫をしている家庭は少なくありません。
効率良くリビングを暖めるため、仏間のふすまを閉めているケースもあります。
それ自体は仕方のないことですが、長い間閉め切っているのは空気を循環させる点では問題です。
ご先祖様を寒い中でお祀りするというのも心理的に良い話とは言えませんから、一日中扉を開放しておくのは難しくても、こまめに開け閉めをしておきたいところです。
金仏壇・金仏具の取り扱いについて
気候や季節による注意点についてお伝えしてきたところで、次に金仏壇・金仏具の種類に即した梅雨時のお手入れについて触れていきます。
今回は、湿気や水気に特化した注意点をまとめてみました。
金属は人間の指と相性が悪い
全ての金属に言えるわけではありませんが、一般的に金属は人間の指と相性が悪い傾向にあります。
お仏壇や仏具で金具の部分は金属が原材料ですから、素手で直接触ると汗がついてしまいます。
汗には水分だけでなく塩分が含まれており、サビを発生させるリスクがあります。
また、金仏壇で用いられる金箔の部分を手触ってしまうと、金箔が剥がれたり、手垢・指紋・汗が汚れとして残ってしまったりするおそれもあります。
特に梅雨の時期は汗をかきやすいため、じっとりとした手でお仏壇を掃除するのは、かえって汚れを増やしてしまいます。
できれば、金属の仏具を取り扱う場面も含め、手袋をはめてお手入れをすることをおすすめします。
ホームセンターなどで手に入る、余分な飾りのない綿製の白手袋で十分ですから、お手入れ用の手袋を用意しておきましょう。
繊細なケアを心がけること
金仏壇はどうしてもきらびやかな部分に目がいってしまうものですが、漆塗りの箇所にも注意が必要です。
漆は湿気によって固まる性質を持っているものの、特殊な加工が施されている場合を除き、水自体に強いわけではありません。
湿気をお仏壇に残さないためにも、お仏壇専用の毛払いでホコリを落とし、汚れはしっかり絞った布で拭いた後で乾拭きすることが基本です。
掃除の際は、水気を極力お仏壇から避ける心遣いが必要です。
金細工が細かい部分は、あえて筆を使ってホコリを取る方法もあります。
このとき、美術用よりは書道用の方が柔らかいため、そちらを使った方がよいでしょう。
筆を使った掃除は、御本尊・位牌にも応用できるため、直接手で触れない掃除を心がけましょう。
必要に応じて専門業者を頼る
お仏壇には「お洗濯」という概念があります。
これは、文字通り水洗いするのではなく、古くなったお仏壇を新品同様に仕立て直すことを言います。
お仏壇のお手入れに関して言えば、決してお洗濯以外の選択肢がないわけではありません。
しかしながら、どうしても自分で細かい部分を手入れするのが難しいなら、そういった専門業者に依頼するのも一つの方法です。
金仏壇はお仏壇の中でも随一といって良いほどに手が込んでおり、素人の手でリペアを試みるのは現実的ではありません。
特に高級なものになればなるほど、自分でやるのには緊張も伴い失敗できません。
失敗が許されない部位の修理・メンテナンスを考えるなら、専門の業者を利用することを想定しておいた方がよいでしょう。
唐木仏壇・白木位牌・木製仏具などの取り扱いについて
続いては、唐木仏壇や白木位牌など、木製の仏具を取り扱う際の注意点についてお伝えします。
金属と比較するとそこまでシビアではないものの、いざ汚れがついたら取れにくいのは同じですから、十分注意が必要です。
極力手あかをつけないことに配慮する
唐木仏壇は金仏壇と違い、木材がほとんどのためサビを気にする箇所はごくわずかです。
しかし、だからといって素手でベタベタ触ってしまうと、どうしても汗・手あか・指紋などが付着してしまいます。
人間の手による汚れは、人間が何かに触れる限り避けられませんから、ある意味風合いとして残しておくという考え方もあります。
とはいえ、やはりお仏壇は御本尊・ご先祖様をお祀りする場所ですから、きれいな状態を保ちたいところです。
手袋を使うかどうかは人によるものの、掃除の際はできるだけ毛払いや布を使うようにしましょう。
水を極力使わないのは金属と同じ
木は金属と比べて、水には耐性こそあるものの、素材によっては傷んでしまいます。
よって、水を使うなら固く絞った布で汚れを拭いて、乾拭きして水気を取り除くのは金仏壇と同様です。
細かい仏具を拭く場合も同様で、その際はお仏壇から下ろして丁寧に汚れを拭き取ります。
また、ロウソクを挿す火立の汚れを拭き取るなら、水分をきちんと拭き取らないとロウが飛び散り火事に発展する場合もありますから、別の意味で注意が必要です。
備え付けの仏具は無理して取り外さない
唐木仏壇は、金仏壇のようなきらびやかさはないものの、彫刻などの細工がとても美しいです。
そのため、できれば細かい部分も掃除したいと思うでしょうが、あまり完璧主義になってもいけません。
綿棒を使ってホコリを取り除く几帳面な方法もありますが、多くの場合、筆や毛払いで十分です。
壊してしまうことのリスクを考え、最小限のケアにとどめておきます。
また、お仏壇に内蔵されている膳引や引出しなどは、無理をして取り外す必要はありません。
あくまでも、換気をして湿気を拭き取る程度にとどめ、壊さないよう注意して取り扱いましょう。
おわりに
梅雨時や暑い時期・寒い時期などのお手入れ方法についてご紹介してきました。
温度差があっても共通しているのは「湿気」への対応であり、木にとって快適な状態を保つよう心掛けることが大切です。
また、木は乾燥・湿気のいずれも過度になれば傷みが生じるため、安置する場所が重要になります。
スペースの都合上、置き場所がどうしても限られてしまうのは致し方ないとしても、気温や周囲の環境は、どうしても四季に左右されてしまいます。
そのため、季節の移り変わりを見越した上で、適切なお手入れ方法を覚えておくと、お仏壇や仏具を長持ちさせることができるでしょう。
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