実はトラブルも多く要注意なお仏壇の相続。
相続人や財産分与や相続税など注意点について
いつものお仏壇や仏具などの選び方や解説から、少しテーマは違うかもしれないけれども、同じ仏壇についての話題を1つまとめてみたいと思います。
特に最近では終活という言葉もあるとおり、このあたりは色々と事前に対策、準備しておくという人も増えてきています。
そんな終活の中でもあがりやすい相続の中でも、お仏壇の相続については実は少し注意が必要ということで、見ておきましょう。
家のお墓・お仏壇がある家庭で、家族の誰かが亡くなったら、ほとんどの人が同じお墓に入ることでしょう。
しかし、そのお墓・お仏壇を誰が継承するのかについて、家族・親族間で共通の認識を持っていないケースは少なくありません。
一般的に、お墓やお仏壇は相続財産の対象とはならず、祭祀財産として取り扱われます。
基本的には、生前の遺言等で継承者として指名された人が継承する流れとなりますが、必ずしも相続人が継承する必要はありませんし、親族の枠内で継承するなどの制限もありません。
極論を言ってしまえば、赤の他人に管理を任せたとしても許されます。
ただ、長らく人生をともにしてきた家族が眠るお墓・お仏壇を知らない人に任せるのは、やはり抵抗があるはずです。
そのような理由から、実際にお墓やお仏壇の管理を行っていた家族が亡くなった場合、新しい継承者を立てる家がほとんどです。
気を付けたいのは、家族間で暗黙の了解が存在している場合を除いて、継承にあたり遺産相続・お墓やお仏壇の管理に関するトラブルが発生するリスクがあることです。
この記事では、相続人・財産分与・相続税という3つの視点から、お墓・お仏壇等の相続に関するトラブルの事例と、その対処法についてご紹介します。
相続人に関するトラブルと対処法
まずは、相続の当事者となる相続人同士で起こることが予想されるトラブルと、その対処法についてご紹介します。
どちらかというと、お金や土地などのリアルな問題というよりは、今後の供養に関する責任の問題がほとんどです。
お仏壇の継承者が決まっていない
遺言などで、故人の生前にお仏壇を相続する人が決まっているのであれば、お仏壇の相続についてもめる可能性は低いでしょう。
しかし、急に供養している家族が亡くなった場合、その後誰がお仏壇を継承するのか決められず、トラブルが発生するおそれがあります。
特に、実家から離れ遠方で暮らしている長男などの場合、引き継いだとしてもなかなか供養の時間が取れず苦労するかもしれません。
そこで、比較的実家の近所で暮らしている家族に相談して、相続人になって欲しいと話すケースも出てきます。
遺産相続全般に関して言えば、誰がどれだけの遺産を相続するかでもめるものですが、お仏壇に関しては「誰が面倒を見るか」が主な論点になります。
一昔前であれば、その時点での長兄・長姉がお仏壇を引き継ぐものと理解されていましたが、現代では必ずしもそのような考え方が通用するとは限りません。
トラブルを防ぐためには、できるだけ家族の間でこまめに将来の話し合いをして、お仏壇を誰が継承するのか・遺産相続をどうするのかなど、意見をまとめておくことが大切です。
供養自体は、家族全員で行うのが本来の意味合いとして正しいことですから、継承者の有無にこだわらず全員で守っていくというのも一つの方法です。
ちなみに、お仏壇を継承する人・すなわち祭祀継承者は、民法の規定上は以下の順番で決定されます。
- 被相続人が指定した者
- 慣習
- 家庭裁判所による決定
継承者がどうしても決まらない場合は、上記のいずれかの方法を選んで決定する形となります。
指定された継承者側に問題がある
遺言によってお仏壇の相続人が指定されていても、相続人自身は寝耳に水の話で、心の準備ができず戸惑ってしまうこともあります。
逆に、遺言によって特定の人物が継承者となった場合も、どうしてその人物が継承者となったのか理解できなければ、家族・親族が反発するでしょう。
生前家族に隠していたことを遺言で公表した場合は、その内容に対する反感もあり、遺された家族がお仏壇の継承そのものを見直してしまうかもしれません。
こちらも、できるだけ生前に同意を得ることが重要です。
ちなみに、お墓の相続拒否に関しては、権利放棄にかかる規定が存在しません。
そのため、遺産を相続する権利を放棄したとしても、残念ながら継承者として指定された以上、継承者はお墓を守っていかなければなりません。
ただ、お仏壇に関しては、そもそも名義変更という概念そのものがありませんから、家族みんなで話し合って供養の方法を決めることもできます。
例えば、お墓の管理は長男・お仏壇の管理は長女といったように、責任を分割して柔軟に供養するという方法もあります。
可能な限り、家族全員がお墓・お仏壇に関わるスタンスで話し合うことが、将来にわたりトラブルを防ぐことにつながります。
財産分与に関するトラブルと対処法
次に、お仏壇の継承に伴う財産分与に関するトラブルと、その対処法についてご紹介します。
お墓・お仏壇自体は直接遺産相続に関わりませんが、それらの継承を理由に相続財産の分配を増やすなどして、後々トラブルになるケースが見られます。
祭祀財産を継承する人に、多くの財産を相続する内容の遺言だった
お墓・お仏壇を継承する場合、墓地に支払う管理費・お仏壇への毎日のお供え・お坊さんへのお布施など、諸々の管理費用が発生します。
しかし、それらを継承者がすべて負担するのは酷だということで、故人が遺言であらかじめ継承者に対して多めに遺産を用意しているケースがあります。
継承者がきちんと仕事をしてくれるならよいのですが、自分のためにお金を使うような継承者を選んでしまうと、お墓・お仏壇の管理をきちんとできない状況が続いてしまうかもしれません。
また、分配された金額の内容があからさまに不平等だったり、金額の根拠が明らかでなかったりした場合、他の家族・親族が不満を持つのは当然です。
こういったトラブルを解決するためには、どうして継承者に多くの遺産を分配するのか、できるだけ客観的な理由を遺言に盛り込むことが大切です。
長男だから・同居しているからといった理由だけでなく、具体的にお墓・お仏壇を継承することでどれだけのランニングコストが発生するのか、数字を使って説明するのが望ましいでしょう。
とはいえ、日々のお供えにいくらかかっているのか、細かくレシートを取っておくようなやり方は現実的ではありません。
最低限、以下の金額をまとめておくだけでも、負担度の理解が違うはずです。
- 年間管理費
- お布施(法要/月命日の供養など一年間の総額)
- お墓までの交通費
- お盆など、仏事でお墓に飾る花代・果物代など
配偶者が離婚した
生前、夫もしくは妻との関係が悪く、どちらかが亡くなったことをきっかけに離婚したとします。
そこで元配偶者が旧姓に戻ってしまうと、もはやその人は家にとって関係ない人となってしまうことから、新しく継承者を決めなければなりません。
「同じお墓には絶対に入りたくない」と強い決意で離婚した人に対して、お墓やお仏壇を守ってもらうことは望めませんから、残りの相続人たちで継承をどうするか話し合う必要があります。
家制度の枠組みでは、祭祀に関することは原則として同一の姓を持つ人が行うものと考えられているため、仮に子どもたちと血を分け合う立場であっても、継承者になってもらうのは難しいでしょう。
ただ、配偶者と故人の年が近い場合は、遅かれ早かれ配偶者も浄土に向かうものと考えられますから、これを機会に子供・親族間で話し合い、誰の家で長期的に継承するのか決めてしまうと、後々楽になるはずです。
覆水盆に返らずと言いますから、終わった関係に固執するのではなく、未来志向で継承者を決めることが大切です。
相続税に関するトラブルと対処法
すでにお墓・お仏壇がある家の場合は問題になりませんが、これからお墓・お仏壇の準備をしようと考えている家の場合、気になるのが相続税の問題です。
お墓・お仏壇は相続財産にはカウントされませんから、原則として相続税を気にする必要はありませんが、一部例外もあることに注意が必要です。
そもそも、お墓・お仏壇に相続税はかからない
仮に、生前に準備を終えたとして、その後それらを継承した場合、相続税は発生するのでしょうか。
結論から言えば、お墓・お仏壇は祭祀財産のため、相続税の課税対象とはなりません。
この点に関しては、相続税法第12条2項に、以下のように記載されています。
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
よって、お墓はもちろんのこと、お仏壇ならびに仏像などの礼拝物も、相続税が課税されません。
相続が開始された段階で購入した場合、相続税の債務控除はできない
お墓やお仏壇などに相続税が課税されないということは、相続税に関する「各種税金の控除も受けられない」ことを意味しています。
つまり、遺産相続が開始された後の段階で、相続した資産を使ってお墓やお仏壇を購入したとしても、相続税の債務控除はできないのです。
逆に言えば、故人が生前の段階でお墓・お仏壇を購入していた場合は、当然その分現金が減ります。
よって、購入にかかった金額分だけ相続税の計算対象から外れますから、相続税対策を考えるなら生前の購入を検討したいところです。
ちなみに、債務控除の対象になる債務というのは、
「故人の債務で、亡くなった後現存し、故人の債務であることが確実と認められるもの」
だけです。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 借入金(金融機関/個人問わず)
- 死亡後に支払う所得税、住民税、固定資産税などの租税公課
- 病院に支払っていない医療費
- 水道光熱費/電話代等の未払金(故人が使用していた期間に限る)
- 不動産の敷金
- 事業上の未払金(買掛金のような取引上必要な掛払分)
相続税を少しでも減らそうと考えているなら、生前の対策が肝心です。
お仏壇・仏像には、一部注意が必要なものもある
原則として相続税が発生しないお仏壇・仏像ですが、一部例外があります。
具体的には、以下の2点が対象となります。
骨董品的価値があるお仏壇・仏像
古くから歴史を紡いできたお仏壇の中には、一基数百万円するものもあり、ご本尊に用いられる仏像に高値がつくケースも見られます。
中には、歴史上の有名人が保有していた仏像をご本尊としている家もあり、そういった特殊な事情がある家では、骨董品的価値があるものとして相続税の対象となる場合があります。
ただ、骨董品的価値を家族および周辺の人が見出していない場合は、そもそも財産として認識していないことの方が多いはずです。
骨董品としての価値を保有者が理解していて、厳重に保管しているなどの事情がある場合を除いては、特段気にする必要はありません。
要するに、日常的な礼拝の対象として使用しているお仏壇・仏像であれば、相続税の対象とはならないと考えてよいでしょう。
売り物としてのお仏壇
こちらも個人宅ではあまり気にする必要はありませんが、もし自宅に販売を想定しているお仏壇がある場合、そちらは課税の対象となります。
例えば、自宅兼店舗でお仏壇・仏具を取り扱っている場合、売り物で資産価値の高い品物だけを個人保有という扱いにはできません、
他には、課税を免れるため、贅沢なデザインの仏像などを購入するケースがあります。
こちらについても節税の意味では不十分で、例えば純金の仏像を製作してもらい、自宅で礼拝の対象としていたとしても、製作費は差し引かれますから、結果的に純金をそのまま購入するよりも損をする計算です。
下手にごまかそうとするよりも、生前に準備を行うことが大切と心得ましょう。
おわりに
お仏壇を相続する場合、お墓・仏像なども含めて、極力継承者の負担にならないような形でプランを練る必要があります。
日々のおつとめだけでなく、法事ごとに発生するお布施などのランニングコスト・墓参りの手間や費用などにも気を配りつつ、遺産相続も含めた形で継承を考えるのが理想です。
相続税を減らしたいのであれば、遺産相続前の段階でお仏壇などを準備することが、対象となる資産を減少させる上で有効です。
できるだけ、生前のうちにトラブルの種を摘んでおくことが大切です。
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