お仏壇の内扉の障子の取扱いはどうすれば?
掃除や貼り替えなどの日々のメンテナンスについて

  • 2019.10.02
  • 2020.04.06

仏壇

お仏壇は、生前ご先祖様が暮らしていた環境を模して作られています。
厳密には「お寺の出張所」という扱いではあるのですが、基本的な構造設計としては「家」がベースとなっているため、パーツの中には家屋を連想させる部分もあります。

その一つが「障子」で、御本尊と私たちとの間にヴェールを設ける役割を担っています。
地域によっては「戸軸(とじく)」という名称で知られている扉のことです。

昔からある金仏壇・唐木仏壇では見かけますが、現代で多くなってきているモダン仏壇や家具調仏壇などでは一つしか扉がないことも珍しくありません。

そのため、手入れの方法を知っている人も少なくなってきました。
そこで今回は、障子の掃除・メンテナンス・金箔がはがれた際の貼り替えなどについて、基本的なことをいくつか紹介していきたいと思います。

そもそも、お仏壇に障子はあるのかどうか

冒頭でもご紹介しましたが、障子というのは二重扉の名称の一つに過ぎず、全国的に共通の見た目・名称を持っているわけではありません。
障子を備えているお仏壇の種類も限定されており、そもそも障子自体を見たことがない人も多いはずです。

日本家屋が主流だった時代は、どの家にも障子が見られましたが、洋風建築・マンション等が一般化した現代では、和室の空間を区切るために使われる程度です。

そのため、障子の存在に意識を向けることが難しいのは、致し方ないことなのかもしれません。

お仏壇における「障子」とは、二重扉の内側のこと

お仏壇における障子とは、かんたんに言ってしまえば「二重扉の内側」のことです。
古き良き日本家屋の窓は、障子と雨風をしのぐ雨戸とで構成されており、それをお仏壇にも当てはめた格好になります。

ちなみに、お仏壇に用いる名称として広く知られているのは、内側の扉は先程ご紹介した戸軸、外側の扉は大戸(おおと)・戸板(といた)です。
地域や業者によって用いる単語は違いますが、意味するところは同じです。

障子を設けたのは「ご先祖様が住まう空間」だから

仏教的価値観では、御本尊・ご先祖様が住まう環境と、私たち人間が暮らす環境とを、明確に区別します。
仏堂の中でも、僧侶だけが立ち入ることを許される聖域・参拝者も入れる領域について、はっきりと分かれています。

お仏壇も同様で、この世とあの世の境目を明確にすべく、扉を設けています。
しかし、ここが昔の日本人の情愛と言うべきか、せっかく作るなら「自分たちが暮らしている家」と同じような構造にしようと考えたのです。

古いデザインのお仏壇が凝った造りをしているのは、ご先祖様の存在が他人事ではなかったからです。
自分たちをこの世に送り出し、同じ時代を生き、幸せを与えてくれた人たちだからこそ、丁寧に供養したいという気持ちがあったことを示しています。

言い換えれば、ご先祖様がお住まいになる空間のお仏壇を、できるだけ住みよいものに仕上げたいという気持ちがあったからこそ、現代にまでそのデザインが引き継がれているものと考えられます。

障子もまた、その思いが具現化したパーツの一つなのです。

金仏壇・唐木仏壇では見られるが、モダン仏壇では無い事が多い

現代の傾向として、障子を見かけるのは金仏壇・唐木仏壇が多い傾向にあります。
金仏壇や唐木仏壇であっても、格安系などコスト削減を重視したお仏壇は二重扉ではないお仏壇もあります。

また、現代風のインテリアに配慮したデザインのモダン仏壇においては、まず見かけません。
同様に、マンションやひとり暮らし用サイズなどの小さな小型・ミニ仏壇などにも無い事が多いです。

モダン仏壇の場合、扉は一重で、デザインも一見すると戸棚のようなシンプルなものです。
一部新興宗教でも簡素なデザインのものは見受けられますが、上級クラスになると丁寧な彫刻がなされた障子も見かけます。

彫刻・デザインが精巧なお仏壇をお持ちの方で、お手入れを面倒に感じる・不器用で壊してしまわないか不安、といった悩みを抱えているケースは多いようです。

実際、手前味噌でケアをしたばっかりに、高額の修理費用がかかってしまったという声もよく聞かれます。
しかし、先祖代々引き継がれてきたお仏壇であるなら、それを手入れの問題からモダン仏壇などに買い替えるという判断は、軽率に行うべきではありません。

自分たちで全てのメンテナンスを行うのは難しいかもしれませんが、個人にできることをするだけでも見た目の美しさは保てますから、まずは一度セルフケアを試みてから買い替えを検討するようにしたいものです。

金仏壇の障子の掃除・メンテナンス方法

金仏壇の具体的な掃除・メンテナンス方法について触れていきましょう。
金仏壇は、職人による丁寧な装飾が各部位に施されており、素人がケアを試みると傷が残る可能性が高いため、取り扱いには注意が必要です。

金仏壇は「触らぬ神に祟りなし」と押さえておこう

金仏壇の障子を掃除する際に覚えておきたいことは、基本的に「触らぬ神に祟りなし」であるというルールです。
というのも、金仏壇の障子には、漆・金箔といった特殊な素材が使われているからです。

漆には、湿気によって固まる性質があります。
職人の方でも「塗るよりも乾かす方が難しい」と言われるほどに取扱い注意なモノで、一定の湿度を保たなければならないので気を遣います。

また、乾燥が過ぎれば表面の艶が失われ、しかも漆を塗り直せばよいというものでもありません。
素人が手を加えるだけでも環境が大きく変わってしまうため、濡れ雑巾で表面を拭くだけでもダメージを与えてしまうおそれがあるのです。

より気を付けたいのが金箔で、ちょっと周囲の汚れを落としただけでも金箔が剥げてしまったというケースはよくあります。

そのため、剥げた部分だけ金箔を貼ってもらえば大丈夫だろうと考える方もいるでしょうが、もし修繕を依頼した場合、ミニ仏壇を購入するのと同じくらいの費用が発生します。

金箔自体を仕入れるのも、綺麗に貼り替えるのも技術を要するため、自力でできる人はほとんどいないでしょう。
しかも、漆や金箔というのは、障子に限らず金仏壇の多くの部位に用いられています。

金仏壇の障子を掃除する時は、傷をつけないように最大限の注意を払い、時には無理に掃除をせず、業者に貼り替えをお願いする勇気も必要です。

絶対ダメ!掃除の際にやってはいけないこと

金仏壇に使われている漆・金箔に傷をつけないためには、やってはいけないことがたくさんあります。
そこで、普段の掃除で行いがちな、いくつかのパターンをまとめてみました。

濡れ雑巾はNG

一般的な掃除において、綺麗に汚れを拭き取るためには、濡れ雑巾で拭いて乾拭きするのが基本です。
家具などでは通用するこの方法も、繊細な素材が使われている金仏壇ではNGとなります。

先にお伝えした通り、漆は乾燥し過ぎても湿気が多すぎても、もとの状態に何らかの影響を及ぼします。
そのため、濡れ雑巾でお仏壇を拭いてしまうと、それが跡になり残ってしまう可能性があります。

金具部分は、言うまでもなくサビの原因になりますから、水分を含まない布で汚れを払うにとどめます。
もっとも、金具部分だけが極端に汚れてしまうことは考えにくいですから、あえて手をかけないことも大切です。

「金」の名がつく素材には絶対に触れない

見た目や金額の面でもっとも注意したいのが「金箔・金粉」の扱いで、素人が手をかけようとするとまず失敗します。
ここはプロの領域だと理解しておきましょう。

内側を布巾で軽く拭こうとするだけでも「御法度」のレベルで問題です。
とはいえ、ほこり・汚れによって色合いがくすんでしまった場合、何とかして汚れを取りたいと考えるのは自然なことです。

このような場合、例えば気になる部分にだけ金箔を押し直すことはできますから、やはりプロに頼みたいところです。

くすむならまだしも、せっかく手入れしたのに金箔・金粉がはがれてしまっては、より見た目がみすぼらしくなります。
色合いが悪くなったと感じたら、専門業者に貼り替えの見積もりを依頼するのが賢明です。

金仏壇は他の仏壇と違い、「仏壇のお洗濯」と呼ばれるくらいに掃除やメンテナンスの専門業者がいるくらいですから、変に触ってしまうくらいならプロに頼むというのも1つの手です。

漆や蒔絵は、できれば「触らない」こと

漆は、金箔などに比べればシビアではありませんが、少なくとも素手で触らない方が賢明です。
障子の蒔絵もまた、そのデザインが美しいわけですから、極力形を崩さないようケアする必要があります。

極力、対象に力を入れないように、毛バタキなどで軽く払うにとどめれば、劣化させずにある程度の汚れは落とせるでしょう。
しかし、もっともよい方法は「フレーム部分以外を触らない」ことです。

冷静に考えてみると、障子を致命的に汚す場面というのは、なかなか考えにくいものです。
普段から丁寧に取り扱っている方がほとんどのはずですから、明らかに目立つ汚れが生まれるのは、何かトラブルがあった時だけです。

あえて、小さなほころびには目をつむり、全体の美しさを尊重するようにしましょう。

最低限、ほこりを払うだけにとどめ、必要に応じて業者に依頼を

金仏壇における障子のケアについてまとめると、最低限のケアとして「ほこりを払う」だけにとどめた方が、結果的にダメージを与えずに済むと言えそうです。

どうしても見栄えが悪いと感じた段階で、必要に応じて業者に修理を依頼した方がよいでしょう。

一から何かを作るのと、原形をとどめたまま壊れた部分を修復するのとでは、後者の方がより複雑かつ精巧な技術を要求されます。
特に、金仏壇は各部位を担当する職人が存在するほどですから、素人には手の及ばない部分が数多く存在しています。

無駄な出費をしないためにも、開け閉めの際に素手で触れない・基本的には開け放しておくなど、毎日の使い方に気を配って汚れが目立たないようにしたいものです。

唐木仏壇の掃除・メンテナンス方法

唐木仏壇の場合は、もともとの素材が木材であり、表面も何らかの加工が施されていることがほとんどですから、金仏壇ほどに神経を遣う必要はありません。
しかし、障子の種類によって掃除の仕方が異なるため、一律のケアでは対応が難しいことに注意しましょう。

基本は木材なので、金仏壇ほどナイーブではない

唐木仏壇は、比較的頑丈な木材が使用されているため、金仏壇と比べると手入れに工夫が必要な部位は少ない傾向にあります。
しかし、障子が重みによって下がったり、開閉が難しくなるほどねじれが生じたりするケースも珍しくありません。

基本的には、そこまでのレベルになったら業者に修理を依頼した方が賢明です。
それ以外の部分では、ホコリを払う毛バタキや、使い捨ての化学雑巾で汚れを拭き取るだけで十分と考えておきましょう。

彫障子(ほりしょうじ)は彫刻を壊さないように注意

障子に精巧な彫刻が施されているものを、俗に彫障子と言います。
こちらは一度壊れてしまうと、素人の手では手直しがほぼ不可能なため、破損させないように手入れをしなければなりません。

特に彫刻には草花や鳥などが描かれる事が多いですが、その彫りの先端などは力の入れ方を間違えたら折れてしまうなどの懸念もあるため注意が必要です。

彫刻を壊さないためには、できるだけ人間の手で触れないように掃除した方が、パーツの破損を防げます。
具体的には、掃除用の筆など柔らかい素材を使って、ホコリを落としていくだけで十分です。

お仏壇を掃除するための筆は、専門店だけでなく百均ショップでも売られているため、そこまで手に入れるのに難儀することはないと思われます。
しかし、どうしても見つからない場合は、使わなくなった習字用の筆(しっかり水洗いしてほぐされているもの)を代用する方法もあります。

習字用の筆で代用する場合の注意点としては、きちんと墨の汚れを落としておくこと・しっかり筆先を乾かしておくことが挙げられます。

しっかり洗って乾燥させたつもりでも、大きな墨の固まりが残っていることがありますから、お仏壇に触れる前に汚れが落ちているかどうかを再度確認しましょう。

細かいところが気になる方の中には、爪楊枝・歯ブラシといった道具を使って、汚れをかき出そうとする人がいるようです。
しかし、頑丈な木材を使っているとはいえ、彫刻は繊細なものですから、極力乱暴に掃除することは控えたいところです。

筬障子(おさしょうじ)は枠をしっかり掃除する

格子のように、長方形の枠の中に縦横の線が入っている障子を、俗に筬障子と言います。

筬(おさ)というのは、織物を作る際に使う「織り機」に付属する部分で、縦糸を揃えつつ横糸を押し詰めて、織り目を整えるために必要なものです。
その形状に似ていることから、筬障子という名称が用いられるようになったものと推察されます。

彫障子が彫刻主体でのケアを行ったのに対し、筬障子の掃除では「紗(しゃ)」と呼ばれる障子内の布を傷めないようなケアが要求されます。
これを破かないように掃除するためには、やはり筆を使ったホコリ取りが有効です。

格子状になった障子の内側を、紗に力が乗らない程度の距離感で、軽く筆で払っていきます。
これだけでも、十分綺麗に見えるはずです。

おわりに

以上、お仏壇における障子の掃除方法・メンテナンスなどについてご紹介してきました。
金仏壇は多少の汚れに目をつむり、唐木仏壇は筆で軽く掃除するというのが、個人でできる基本的な対策になります。

貼り替えについては、損傷がひどい場合や掃除に失敗した場合の対応策として考えておけば十分でしょう。
ただし、特に気になる汚れがあるなら、全体に違和感を感じない程度の修繕も想定しておきたいところです。

業者に依頼する場合は、障子の部分的な貼り替えを依頼することもできますから、一概に「お洗濯」をしなければと意気込む必要はありません。
取り返しのつかない失敗をしないよう、自分にできるメンテナンスを続けるだけでも、きっとご先祖様は喜んでくれるはずですよ。

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  • 公開日:2019.10.02
  • 更新日:2020.04.06

カテゴリ:仏壇

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