法要時でも使われる仏具の打敷
意味や役割と宗派による違いと選び方について
お仏壇を真正面から見たとき、その荘厳さに思わず手を合わせたくなるのは、日本人独特のDNAかもしれません。
その理由の一つに、仏壇から醸し出される輝きや華やかさが挙げられます。
お仏壇を美しく見せることは、それ自体が仏様・ご先祖様への供養の意味があります。
今回は、お仏壇を顔に見立てたときに「お化粧」の役割を果たす仏具の一つ、打敷についてご紹介していきます。
仏具の打敷とは
打敷とは、「うちしき」と読み、お仏壇を飾るための荘厳(しょうごん)具であり、いわゆる敷物の一種になります。
荘厳という言葉は、仏教でも数多くの意味を持つ言葉のひとつですが、ここでは仏像・仏堂・仏壇などを美しく飾ることを意味しています。
ほかには、内敷・打布・内布というような別名がありますが表す意味や意図としては同じになります。
お釈迦様が坐る場所に、仏弟子たちが自分の衣服などを敷いたことが起源とされており、感謝・尊敬の念が込められています。
お仏壇もまたそのルーツにあやかり、荘厳具を準備するに至ったのです。
お仏壇に対して飾る仏具にもかかわらず、打敷という単語には「打つ」の意味が込められています。
これは、打つという言葉には「強くたたいてしっかりと全体に張る」という意味があるためで、しっかりと張ってきれいに敷くための敷物であることを示しています。
お客様のためにホテルできっちりとシーツを敷くのと同じように、打敷を美しく敷くことにより、お釈迦様への敬意を示しているのです。
打敷は、基本的には平時に使用するものではなく、法要・お彼岸などのイベント時に使用します。
打敷はどのように敷くのか
打敷は、基本的に前卓や上卓に敷くものになります。
敷く際には、卓から仏具を一度片づけ、必ず仏壇から一度移動させて敷きます。
前卓も上卓もそれなりの重さがありますから、仏壇に置いたまま打敷を敷こうとすると、落として壊してしまう危険性がありますから、必ず取り出すようにしましょう。
敷き方は基本的に同じで、卓の上部の板を外したあと、打敷の白い布の部分を本体の黒塗り部分に置き、そこに上部の板を置いて挟み込むようにして固定します。
卓の上部の板は、下須板(げすいた)・天板(てんばん)などと呼ばれます。
挟み終わると、両端がはみ出しているので、その部分が立ち上がらないように、横に折って見た目を整えます。
あとは、卓をもとの位置に戻し、仏具を置き直したら完成です。
寸法の違い
打敷は、大きさの異なる二つの寸法があり、また、大きさを表す呼び方も独特です。
以下に、詳細をご紹介していきます。
名古屋寸法
主に名古屋とその近辺で作られる打敷に用いられる寸法です。
どちらかというと大きめの寸法が取られているため、大きなサイズの仏壇用と考えて差し支え無いでしょう。
デザインが派手なものもあり、商品によっては100,000円以上の高値が付いていることも珍しくありません。
京寸法
主に京都や富山の高岡などで作られる打敷に用いられる寸法です。
名古屋寸法に比べて同じ規格では小さめのデザインとなっています。
ただし、あくまでも寸法の違いに過ぎないため、京寸法でも大きめのサイズは存在しています。
「代」とは
通販などで打敷の購入を検討する際に、30代・50代などといった表記を目にすることがあります。
これはもちろん年代の違いではなく、大きさの規格の違いを示しています。
数が大きくなるにつれてサイズも大きくなります。
一般的には30代は上卓用、50代以上は前卓用の大きさになります。
中には100代・250代などの超大型向けのサイズもあります。
とはいえ、多くが100代やそれ以上のサイズでも、縦横などのサイズもしっかり書かれているはずですので、そちらもしっかり確認するようにしましょう。
打敷における「夏用」「冬用」の違い
打敷には、使用する時期によって種類を使い分けるという風習があります。
以下に詳細をご紹介します。
夏用・夏向け
薄手の打敷で、涼やかなイメージの刺繍が施されているものが多いようです。
上品でさらりとした質感の正絹製が人気です。
初夏の6月に入った頃から、9月の秋彼岸入り前まで使用します。
冬用
厚手の打敷で、重厚なデザインのものが多く、刺繍も派手になります。
色合いも贅沢に金や朱・紫が使われており、華がある刺繍のものから各宗派の宗紋のみがシンプルにデザインされているものまで様々です。
9月の秋彼岸以降から、翌年の5月まで使用します。
夏に冬用、冬に夏用を使用するのは問題ないのか
厳密に言えば特に問題はありません。
夏用や冬用というのは、いわば見た目的なイメージになります。
もちろん宗派や地域の風習、家庭の取り決めなど細かなルールなどがあるかもしれませんが、そういった事がなければ、特にそこまで夏だから夏用を、冬だから冬用をといった事が決まっているわけではありません。
そもそも打敷自体、使わない・使った事がないという家庭も多かったりするため、そこまで厳格に季節名が入っている事に惑わされなくても大丈夫です。
打敷のデザインの三角と四角の違い
打敷には、宗派によって使用する形状に違いがあります。
以下に詳細をご紹介していきます。
三角打敷
逆三角形の形をしている打敷のことを指します。
主に浄土真宗で用いられる形状で、本願寺派と大谷派で多少趣が異なります。
具体的には、本願寺派では織物を用いるのに対し、大谷派では刺繍が施されているものが好まれる傾向があります。
また、本願寺派では前卓のみに敷きますが、大谷派では前卓・上卓両方にそれぞれサイズの違う打敷を敷くことが多いようです。
四角打敷
浄土真宗以外の主な宗派では、四角型の打敷を使用します。
宗紋の入ったものから織物まで、様々なデザインがあります。
ちなみに、家紋をお持ちの家であれば、家紋を刺繍するサービスもあるようです。
地域性による違いも多い
打敷の三角・四角の違いは、宗派によってある程度の違いはありますが、輪灯など他の浄土真宗系の仏具に比べると厳密な決まりがありません。
そのため、地域や家の風習によっては、宗派を問わずに三角を使ったり、家紋の入った四角を使ったりと様々です。
また、店舗などによっては、家紋等が入った○○宗用打敷と販売されていますが、それらを選ばない一般的な刺繍デザインの打敷を使う方も多くいます。
実際にどのようなものを購入すべきか迷った場合、念のため菩提寺に確認しておくと間違いありません。
打敷の価格帯や相場
打敷を通販サイトなどで見てみると、価格帯の幅の広さに驚く方が多いと思います。
安いものであれば3,000円程度から購入できますが、凝ったデザインのものになると50,000円を超えるものもあります。
もちろんこれらは刺繍や使う糸や素材などで大きく変わります。
特に冬用については、装飾の美しさもあいまってかなりのお値段が付いたものも珍しくありません。
打敷にそこまでの投資をすべきかどうかは、各ご家庭の事情にゆだねられるところがあります。
決して無理の無い範囲で、お仏壇のデザインに合ったものを選びましょう。
また、そもそものお仏壇や他の仏具とのバランスも考えましょう。
仏壇や仏具をそこまで本格的に揃えていないのに打敷だけを超高級な素材で揃えるというのもバランスがおかしくなります。
打敷の普段のお手入れ
打敷は布製の仏具で、毎日使用するものではありませんから、それほど汚れが目立つことはありません。
ただし、何らかの理由で汚れやシミが付いてしまった場合は、自分で洗濯することはなるべく避けましょう。
一般的な衣類と異なり、精巧に作られているものも多く、単純に洗濯してアイロンをかければ良いというものではありません。
場合によっては使われている素材や製法によって、お洗濯やその後の手入れ方法が異なります。
安いものであれば、かえって買い替えた方が良い場合もあります。
このあたりの判断がつかないようであれば、購入した仏具店に問い合わせてみましょう。
長く使っていくうちに、色褪せてしまうのは避けられません。
そのため、あまりにもみすぼらしい見た目になってしまったら、買い替えを検討しても良いのかもしれません。
ただし、先祖代々使用しているような、家紋の入った打敷であれば、まずはお洗濯を検討してみましょう。
年月を経て変わった打敷の必要性
先ほど、打敷の種類には三角と四角があるとお伝えしました。
しかし、この二つの使い分けについては、年月を経るごとに変化の兆しが見えています。
浄土真宗系の宗派では、お仏壇を装飾すること自体が、ご先祖様や仏様への感謝の念を示していると考えるため、打敷を用意しているお家は多いようです。
しかし、それ以外の宗派においては、あまり打敷の使用にこだわらないところも少なくありません。
デザインについてもその傾向はあり、四角の打敷自体がどちらかというとマイナーになり、あまり取り扱いがなくなってきている仏具店もあります。
三角の打敷が宗派を問わず用いられるようになり、宗派ごとの区別が次第にあいまいになってきました。
現代になってから登場した、家具調仏壇などの新しいデザインの仏壇には、そもそも打敷を置くデザインの卓が無いものもあります。
打敷自体を飾る必要性が無いため、打敷を用意するという発想自体が無いお家も多くなってきています。
とはいえ、本格的なデザインの仏壇が全く無いわけではありませんから、購入を希望する層は一定数存在しています。
市場が縮小したとはいえ、仏壇を華やかにする仏具であることは間違いありませんから、ネットでの通販などでは引き続き取り扱いは続くでしょう。
打敷のまとめ
打敷は、仏壇を彩り、お釈迦様への感謝の気持ちを示す仏具のひとつです。
寸法の名称などは一見複雑で、どのような違いがあるのか素人目には分かりにくいところはありますが、基本を知っておけばあまり迷うことはありません。
ご自宅の仏壇によっては、そもそも用意する必要が無い仏具となる可能性はあります。
しかしながら、ハレの日にご先祖様をお迎えするにあたっては、少しでも素敵な環境を用意したいと思うのが人情です。
もし打敷を用意できるタイプの仏壇であれば、一度購入を検討してみてはいかがでしょうか。
実際に一度敷いてみると、お仏壇の雰囲気もガラリと代わり、荘厳で華やかな仕上がり驚くはずですよ。
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