仏具の高月(高坏)や供花や供物台
その意味や役割と選び方や宗派の違いについて
つい多くの人は仏壇を揃えるというと仏壇にばかり焦点がいきます。
しかし、実際には仏壇だけでは何も揃わず、非常に大切な御本尊、脇侍その他の仏具なども必要になります。
仏壇だけでなく、仏具もまた奥が深く、ひとつひとつに役割があります。
役割を理解することにより、先祖供養が日本人の心に深く刻み込まれた習慣であることがより分かるようになります。
今回はそんな仏具の中でも、高月(高坏)や供花、供物台など、いわゆる御供え物を祀る際に使われる仏具についてを解説していきたいと思います。
仏具の高月(高坏)
そもそも高月とは
高月とは、高坏とも表記されることがあり、菓子・果物などといった仏様にお供えする食べ物を盛る台になります。
読み方としては「たかつき」と読みます。
そもそも、お供え物の種類は大きく分けて五つあり、それぞれ
- 香
- 花
- 灯燭(とうしょく)
- 浄水(じょうすい)
- 飲食(おんじき)
と呼ばれています。
今回の高月は、仏飯器・茶湯器などと同様に飲食(おんじき)供養具の一種です。
本来であれば命日などの特別な日に使用する仏具で、主に浄土真宗以外の宗派で使用します。
もし、頂き物や故人の好物が手に入った場合は、高月を使用してお供えしても差し支えありません。
お供えの際は、半紙を敷いた上に菓子・果物を盛って、仏前に供えるのが基本となります。
日本においては縄文時代から使用されてきたと言われている高さのある台で、貴族が贅を成した平安時代以降には、上流階級の食器として木製・漆塗り仕上げの器へと進化しました。
この点から拡大解釈され、尊いご先祖様に対しての捧げものとする意味合いで、仏具としての高月が誕生しました。
形状や種類も幅広く存在しますが、現状としては本来は略式であった円形のものが今では一般的となっています。
古くから用いられている形状では、器が四角形の角高形のものもあります。
家紋を入れた高月の場合は、家紋を手前に向かせて見やすいように置くのが常例です。
高月の種類と材質について
高月にはいくつかの種類がありますから、できればご自宅の仏壇に合ったデザインのものを用意したいものです。
形状によって様々な呼び名があり、デザインも若干異なります。
以下に、主要な高月の種類についてご紹介していきます。
東型(あずまがた)高月
高月と聞いて想像する、ある意味一番メジャーな形状と言えるでしょう。
皿部分と足部分とをつなぐくぼみの部分が、大きめの造りになっています。
また、台部分はやや角を帯びた丸型になっています。
皿には深さがあり、際が立っているのが特徴の一つです。
中京型高月
こちらも高月と聞いて、想像しやすい形をしています。
主に近畿地方で製造されていたことから、このような名称となったと言われています。
今では一般的な仏具店では主流になってきている高月とも言えます。
皿部分と足部分とをつなぐくぼみの部分は、東型高月よりやや小さめです。
台部分は東型高月に比べると丸い印象を受けます。
皿の深さは東型高月に比べると浅く、すっきりした印象を受けます。
京型高月
スマートな印象を受ける高月で、足はワイングラスのような形状をしており、杯部分と足部分をつなぐくぼみの部分がありません。
こちらも主に京都近郊で製造されていたことが、呼び名の由来と言われています。
皿の形は丸みを帯びた曲線で構成されており、中京型に比べてやや平坦な印象を受けます。
鶴高月
足部分が非常に細見のデザインになっており、まるで鶴の足のような印象を受けます。
杯部分と足部分との接合箇所は小さめで、鶴の足の関節のようにも見えます。
非常に上品なデザインの高月の一つです。
東型に形状は似ていますが、鶴の名が付くだけあって高さは高めです。
貫通型高月
京型高月に似た形状で、皿部分と足部分に何もはさまず、そのまま一貫して作られた高月です。
見た目的にもフォルムがスッキリしており、モダン仏壇などにも合わせやすいデザインです。
金蓮華高月
東型もしくは中京型の高月に対して、金色の蓮の装飾を施したデザインの高月です。
金仏壇と相性が良く、浄土真宗で使われそうなイメージですが、どのような宗派にも幅広く用いられます。
その他のデザインの高月
次第に人気を集めている家具調仏壇と違和感が無いように、神道などで使用されるような、高さが低めでフラットなデザインの高月も登場してきました。
後述しますが、これを「供物台」と表記しているお店もあります。
モダン仏具という総称で括られることが多いですが、一般の仏壇に用いても違和感が無い色合いのものも少なくありません。
素材や材質について
高月に用いられる素材は、プラスチック・木材などが主な素材になります。
家具調仏壇などに合わせられるよう、インテリア感覚で使うことを想定し、クリスタル製の高月も作られています。
高月の選び方について
厳密な選び方というのは存在しません。
極論を言えば、お仏壇に合わせたり好みや予算に合わせて選ぶというのが一般的です。
基本的にどのデザインや色を選んだとしても、大きく景観を損ねなければ、特にこの宗派はこのデザインでなければならないという決まりはありません。
また、高月の種別については、地域によって指すデザインが異なったり、正式名称として捉えるのか通称で捉えるのかもまちまちです。
基本的には形状にとらわれずに、自分が気に入ったデザインのものを選ぶのが無難と言えるでしょう。
仏具の供花
そもそも供花とは
浄土真宗における「高月」の意味合いを持つ仏具になり「くげ」と読みます。
浄土真宗系では、仏具の高月を使わずにこの「供花」を一般的に使います。
法要の時に菓子や餅、果物などを乗せるお供え用の器です。
高月と異なるのが、デザインが本願寺派と大谷派においてきっぱりと分かれている特徴があります。
本願寺派(お西)については、縁の部分が六角形となっている、通称「六角」を用います。
これに対して大谷派(お東)では、縁の部分が八角形となっている、通称「八角」を用います。
そのため、本願寺派などの西用の供花を六角供花、大谷派など東用の供花を八角供花と呼んだりもしています。
なぜ、同じ浄土真宗にもかかわらず、このような違いが生まれたのでしょうか。
その答えを知るには、浄土真宗の起源にまでさかのぼる必要があります。
浄土真宗という宗派の開祖が親鸞であることは有名ですが、教団として体制を整えたのは、親鸞の没後10年を経てからと言われています。
親鸞自身には、教団を立ち上げる意思は無かったのです。
親鸞の娘である覚信尼(かくしんに)と門弟たちによって、親鸞の墓所として京都の大谷に廟堂が建てられました。
ここを守る留守職が設けられたことが、本願寺の源流とされています。
その後戦国時代までは、相続問題などの火種を抱えつつも本願寺は一つにまとまっていました。
しかし、守護大名や荘園領主と浄土真宗門徒とが対立した一向一揆において、抗戦派である教如と和睦派の准如とが対立したことにより、二つに分裂する運命を辿ることになります。
やがて教如は引退しますが、家康の援助を受けて現在の東本願寺(大谷派)を建立します。
こうして今に至るまで、浄土真宗は二派に分かれているのです。
距離が離れたことによって、違いを統合する機会が無いまま、現代にまで至ったという見方もできます。
仏具一つとっても、日本の歴史を象徴する出来事が見え隠れするのが、日本における仏教の歴史の深さを表しています。
供花の選び方
先ほど多くの部分を説明してしまいましたが、供花を選ぶ際は、ご自身の菩提寺が東と西のどちらになるのかによって、選ぶ種類が変わってきます。
お東とも呼ばれる大谷派の場合は、八角型の供花を使います。
これに対してお西とも呼ばれる本願寺派の場合は、六角形の供花を使います。
ここだけはしっかりと間違えないように選びましょう。
六角、八角ともにどちらも材質はプラスチック製を金色箔で仕上げたものが、比較的安価で人気です。
金箔は経年とともに色はげや色落ちが見られることが多いため、ある程度の期間で買い替えることを想定して安価なものを購入するのも一つの方法です。
もちろん本格的なものを求めている方には、木製のものも売られていますし、予算や仏壇や他の仏具との兼ね合いも考えて選ぶようにしましょう。
仏具の供物台
供物台とは
供物台という仏具については、お店や地域によって意味が異なる場合があります。
以下に、供物台という名称が示す主要な仏具の形状に触れてご紹介します。
高月と同様の使い方をするもの
お菓子や果物をお供えする際に使用する仏具の1つで、高月よりも高さが低く、デザインも幅広いのが特徴です。
一見するとグラスなどと見紛うほどの美しいデザインのものもあり、モダン仏壇との相性が良い仏具です。
花びらの形を模したものや、小判型の大きさを持つものなど、好みによって選べる自由度があります。
小さめの仏壇でも違和感無く使用できるように準備されたものになります。
仏壇に乗せきれないお供え物を乗せる台
主に折り畳み式の形をした台を指し、大きさとしては経机程度になります。
経机が仏壇正面に配置するのに対して、供物台はその横に配置します。
仏壇に置ききらないような、果物やお菓子を一時的に乗せる台として用いられます。
デザインが経机と比べても遜色無いものが少なくないため、経机の代わりに使用するご家庭もあるようです。
供物台の選び方
高月同様に使用するタイプの供物台については、基本的に高月と同じ目線で選べば問題ありません。
仏壇における配置も同様に考えて差し支えありません。
高月を選ぶか、供物台を選ぶかの基準としては、仏壇のデザインと大きさがあります。
デザインが唐木仏壇・金仏壇のような風格を感じさせるものであれば、高月を使った方が違和感がありません。
高月自体の色合いもそのような仏壇に使われることを想定しているため、紫檀色や溜色、黒檀色などが多く、供物台を使うよりは自然に感じられます。
逆に、家具調仏壇などのモダンなデザインの仏壇であれば、供物台を選んだ方が邪魔になりません。
特に小ぶりな仏壇の場合は、高月が高さがあるため、入らなかったり入ったとしても圧迫感があり、供物台の方がスペースを考慮しやすい利点があります。
お供え物を乗せる台としての供物台については、特に気にせず使用できます。
しいて言えば、仏壇の色合いに合ったものを選んだ方が見栄えが良いでしょう。
御供え系仏具についてのまとめ
一つひとつの仏具をとっても、様々な造りのものがあります。
高月は、他の仏具同様地方によって特色がありますが、その違いを知るお仏壇店は数少なくなってきているのが実情です。
供花についても、単純な宗派間での習慣の違いだけでなく、そこに至った歴史的な意味合いまで考えると、非常に奥が深いものがあると言えます。
供物台は形状が異なるにもかかわらず、お店や地域によって指し示す仏具が異なるため、インターネットなどで購入を検討する際は注意が必要です。
とはいえ、今では高月と供物台の違いなどもなくなりつつあります。
家庭用のお仏壇であれば、伝統型仏壇であれば高月を、モダンや家具調の仏壇であれば供物台をというのが一般的です。
材質も安価なお仏壇の場合は合わせやすいプラスチック製のもの、少しこだわった高級仏壇なら木製のものをといった形で材質を揃えれば問題ありません。
特に高月は名前が地方の作られていた名残のため地名の入った名前のため、ついその地域外は使わないと思う方もいますがそんな事はありませんし、どれを選んでも変わりありません。
御供えを載せるための仏具です。
しっかりとその供養や先祖を敬う気持ちとともに御供えを載せるという意味を理解した上でしっかりと選ぶように心がけましょう。
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