仏具の過去帳・見台の意味や役割から
正しい選び方や使い方と宗派での違いを徹底解説
お仏壇の造り同様、仏具についても様々な意味があります。
また、その役割についても宗派によって重きをおくところが異なりますから、選び方も違います。
今回は仏具の中でも割と重要な役割を担う「過去帳」および「見台」について取り上げています。
それぞれがどのような意味・役割を持つのかと、宗派による取り扱い方の違いについて、選び方と併せてご紹介していきます。
過去帳について
まずは過去帳について、しっかり見て行きましょう。
過去帳の基本的な役割
過去帳とは、その家々における故人の名前(俗名)・戒名(法名)・没年月日・年齢などを記録した、各家庭に伝わる系譜のことを言います。
形状としては、お経が記されているような横長の紙を一定間隔で畳んだものや、縦に綴じられた和本などがあります。
ご家庭で使用するものであれば、前者が一般的です。
記載形式は大きく分けて2つに分かれ、故人の死亡順に記していく年表式と、年月に関係無く三十一日順に配分してある日めくり式のものがあります。
法要のスケジュールを立てる点では、後者の形式の方が便利でしょう。
故人の命日ごとに供養することを大切にしている方が、こちらの形式を選ぶことも多いのが特徴です。
逆に、故人の情報を多く書き留めたい場合は、年表式の方が使い勝手が良いところがあります。
故人の細やかな情報もページを気にすることなく記載できるため、記録簿としても優秀です。
寺院などでは、檀家さんの情報を管理するのに、この形式が用いられています。
初めて聞く方は、過去帳と聞くと単なる帳面としての扱いを想像しますが、宗派によっては位牌の代わりになるもので、決して取り扱いをおろそかにはできない仏具となります。
ご先祖様の位牌が多くなるにつれて、歴史のある家では仏壇に位牌が入りきらないといったケースが往々にしてあります。
そんなときは、三十三回忌・五十回忌といった節目に、過去帳にまとめるという習慣もあります。
過去帳に記述する際は、菩提寺の住職に書いてもらうのが望ましいとされていますが、現代ではそこまで堅苦しくする必要はありません。
各家庭で、故人と縁のあった方や家長が書くなどといった、簡単なルールを設けておくと分かりやすいかもしれません。
鉛筆・ボールペンでの記載についても問題ありませんが、長く残すという点で言えば、硯をすって墨で書き残すのが最良とされます。
保存状態が良ければ、古代の巻物のように千年以上残るものですから、未来の世代のことを考えるのであれば、墨を使ってみましょう。
過去帳の選び方
過去帳を購入する際は、記載形式のほか、表紙や中紙の素材にも違いがあります。
まずは表紙についてですが、表紙の素材には布や和紙・木材などが使われます。
布地を用いた場合の種類はいくつかあり、代表的な造りとしては金襴(きんらん)や緞子(どんす)があります。
金襴とは、糸に巻き付けたり細かく刻んだ金箔を織り込んで、紋様を表した布地のことを指します。
緞子とは、縦・横に異なる種類の糸を使って織られた造りとなっており、光沢と厚みに高級感がある布地のことを指します。
どちらも比較的安価に手に入り、その割に見栄えが良いのが特徴です。
しかし、糸がほつれたり、木材などに比べて汚れやすいリスクがあり、長期間の保管には向かないのが難点のひとつです。
人気があるのは木材のもので、ウォールナットなどの素材であれば、仏壇と揃えることも可能です。
その分値段は多少張りますが、布や紙に比べて重厚感があり汚れにくいので、代々残すことを考えて選ぶ方も少なくありません。
他には、蒔絵(まきえ)と呼ばれる漆を使ったデザインのものもあります。
蒔絵とは、漆器の表面に漆で絵を描き、乾かないうちに漆を接着剤代わりにして金銀をまき、絵を定着させたものです。
絵柄が豊富なため、好みの絵柄を選ぶ楽しさがあります。
中紙としては、和紙を使ったものと洋紙を使ったものとがあります。
和紙を用いているものは、洋紙に比べて少し厚手の紙を使用しているものが多く、永く保管するのであれば、和紙に軍配が上がります。
一度購入すると、数十年にわたり使用するものですから、それぞれのご家庭のニーズに合わせ、費用対効果を考えて選びましょう。
見台(けんだい)について
続いて、見台について見ておきましょう。
見台の基本的な役割
見台とは、ご家庭の仏壇において、過去帳を載せておくための台のことを言います。
そもそも過去帳は、ほとんどの宗派では仏壇に飾ります。
詳しくは後述しますが、ほとんどの宗派において、過去帳は位牌と同様の役割を果たしている事もあり、亡くなられた方の情報が記載されているため、決しておろそかには扱えないのです。
月命日などには、故人のことが書かれたページを開いて供養します。
しかしながら、その際に過去帳だけでは、きちんと開いた状態を保てません。
これは本をイメージしていただければわかりやすいですが、その本を途中のページを開いたまま固定するのは他の何かの道具を使わずには難しかったりしますが、これと同じです。
多くの過去帳はその構造上、立てた状態で仏壇に安置しておくことが難しいところがあります。
そのため、見台に過去帳を載せて安置するのですが、これこそ見台の主な役割になります。
見台の選び方
見台を選ぶ際に気を付けたい点はいくつかあります。
おさえるためのツメの存在
まず1つめが、開いた過去帳をおさえるための「ツメ」があるかどうかです。
これは「過去帳押さえ」とも呼ばれ、供養の際、過去帳を開いたままにしておくために便利な機能です。
簡素な造りの見台の場合、過去帳を開いて供養することを想定していないことも多くあります。
主に過去帳を載せるという役割のものも多く、閉じた状態のものを置くだけに留まった造りになっています。
一部の宗派に見られるように、過去帳を記録のためにのみ用い、供養に使わない場合はそれでも支障ありませんが、そうでない場合は、留め具が付いているものを選んだ方が機能的です。
仏壇や過去帳との素材や色合わせ
次に確認しておきたいのは素材・材質です。
素材や材質そのものはもちろんの事、そこに色などもしっかり見ておきましょう。
値段が安価なものの場合、材質にプラスチックを用い、色付けで黒檀などの高級感を出しているものもあります。
通販サイトなどで探す場合、PCなどと表記されているものが該当します。
当然ながら木材を使用しているものの方が質感も良く、長持ちします。
ペイントやプリントタイプの場合、色が剥げるとその時点で質感を損ないますから、永く使うことを想定した場合、素材はきちんとしたものを選んだ方が賢明です。
また、仏壇や過去帳との色合いを統一した方が景観を損ねませんから、自宅の仏壇の色合いも鑑みて選ぶ必要があります。
浄土真宗では、金仏壇が推奨されることが多いため、もし金仏壇をお持ちの方は、金箔仕上げなど金色の装飾がなされているものを選ぶと、景観にマッチします。
各宗派による取り扱い方の違い
過去帳は、各宗派によってその取り扱いに違いがあります。
以下に、詳細をご紹介していきます。
必ず事前に菩提寺などに相談する事
どの宗派においても言えることですが、初めて過去帳に記載する際は、菩提寺の住職に一言相談すると良いでしょう。
直接書いてくれる場合もありますし、書き方だけ教えてもらい、自分で書く方法もあります。
どちらの場合であっても、正しい書き方を理解したうえで記載するようにしましょう。
一般的な書き方の順序としては、以下の流れとなります。
- 一行目に没年月日を記載する
- 二行目に戒名(法名)を記載する
- 三行目に故人の名前(俗名)・享年・続柄等を記載する
- もし、特記すべき功績・事項があれば、次の行に記載する
これらのルールは、菩提寺や地域によって細かな違いがあるため、事前に確認しておいた方が賢明です。
上記を踏まえたうえで、各宗派における過去帳・見台の取り扱いについてご紹介していきます。
天台宗・真言宗・臨済宗・曹洞宗
一般的に戒名と呼ばれているものを構成する要素は、天台宗や真言宗においては以下の4つになります。
- 院号
- 道号
- 正式な戒名
- 位号
概ね九文字程度が、戒名を書く欄に記載されます。
日蓮宗
日蓮宗では、正式な戒名に該当する箇所を「法号(ほうごう)」と呼びます。
それ以外は、天台宗などと同様です。
浄土宗
浄土宗の戒名には、天台宗や真言宗における、基本的な構成要件の4つに加えて、誉号(よごう)と呼ばれるものが入る場合があります。
これは本来、五重相伝(ごじゅうそうでん)と呼ばれる、浄土宗のお念仏の教えを、檀家に五日間にわたり、五つの順序に従って伝える法会を受けた方にのみ与えられるものです。
現代では、信仰に特に篤い方に与えられる号の一つとされています。
記載する際には、このような点も考慮する必要がありますが、住職の方に書いてもらう場合は、特にこちらで気にする必要はありません。
浄土真宗(浄土真宗 本願寺派・真宗 大谷派)
他の宗派から比べると、独特な点が多々ある浄土真宗ですが、戒名というものは存在せず「法名」を記載することになります。
その他の書き方の順序に大きな違いはありませんが、浄土真宗の法名の書き方は非常にシンプルです。
男性 | 釋○○ |
---|---|
女性 | 釋尼○○ |
このような書き方になり、他には院号と呼ばれるものが付く場合があります。
仏壇における取り扱いとしては、基本的に供養の際に使用しないため、あくまでも記録媒体としての役割のみを持ちます。
これは、浄土真宗で位牌を作らないのと同様と理由で、浄土に往生した者は全て、阿弥陀仏と一体となるという考え方に由来しています。
あえて、信仰の対象を阿弥陀仏以外に設ける必要は無いとの考え方を持つのが、浄土真宗の大きな特徴の1つです。
そのため、過去帳は仏壇に備え付けの引き出しにしまっておくのが主流です。
とはいえ、先祖供養と宗派は別物と考える方の場合は、位牌や見台と併せて配置しているお家もあります。
この場合は、菩提寺の見解や家族の意見によって、配置場所が異なりますので注意しましょう。
過去帳や見台のまとめ
過去帳が持つ性質は、宗派によって違いが異なることがお分かり頂けたと思います。
また、見台についても、機能性やデザインを含めて選ぶことが大切です。
宗派によっては用途さえも異なる事になる場合があるため、初めて購入を考える際は、きちんとした仏壇・仏具店に相談することが大切です。
過去帳においては、浄土真宗であれば簡素なデザインのもので支障無いという判断ができる場合もありますし、日々の供養に用いるのであれば耐久性を考える必要も出てきます。
お家の歴史を書き記す要素もありますから、中紙の種類や記載形式についても、使い勝手を考える必要があります。
見台は、お仏壇の見た目にマッチするデザインを選ぶことも大切です。
留め具などに留意するのはもちろんですが、色合いを考えなければ全体と比べて浮いてしまいますし、ペイントであれば剥がれたときに素材の地の部分が現れてしまいます。
サイズについても、お仏壇の大きさを考えて選ばないと、小型のモダン仏壇などであれば、配置に困ってしまう可能性もあります。
実際にお店に足を運んだとき、ご自宅にある仏壇と似たような大きさのものと比べてみて、配置が可能かどうかを検討した方が無難です。
お仏壇同様、簡単に買い替えがきかないからこそ、できる限り吟味して選ぶことを心がけましょう。
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