意外と多くの人が悩む位牌の安置場所。
お仏壇がない位牌だけの場合はどうすれば良いのか。
位牌と言えば、お仏壇に安置することが長らく当たり前の時代が続いていました。
しかし、価値観の多様化によって、お仏壇の形状も変わり、現代では位牌をどう安置するのかについてもさまざまな考え方が生まれてきました。
今回は、位牌の安置場所について、過去~現代までの考え方における変遷にも触れてご紹介していきます。
位牌の安置とお仏壇をめぐる最近の事情
そもそも、お仏壇をめぐる最近の事情として、より現代的なデザインの仏壇・仏具が増えてきた傾向は無視できません。
そのため、仏像・仏具・位牌の安置についても、工夫を凝らす必要があるデザインが普及し、仏壇仏具店としてもどのように商品を案内すべきかに苦慮しているという側面があります。
モダン仏壇に見られる現代風アレンジの台頭
まず、ライフスタイルの欧米化に伴い、新しくお仏壇を購入しようと考えている層の中には、今までの本格仏壇のデザインが受け入れにくくなっている方も一部存在しています。
確かに、ヨーロッパスタイルのリビングにおいて、純和風のお仏壇が一台たたずんでいるのは、違和感を感じてしまうという事もあるかもしれません。
賃貸・購入ともに、現代では間取りや雰囲気を全てオーダーメイドで選ぶのは難しいため、どうしても洋風のデザインが中心になってしまいます。
実際に今の住宅事情はオールフローリングなどで和室が存在しない部屋の方が人気も高くなっています。
このような事情から、お仏壇を購入する際にはどうしても自宅のデザインをある程度尊重しなければならないのです。
ただし、大きさは本格仏壇と変わらないものも多いため、少なくとも位牌の安置スペースに困ることはないでしょう。
コンパクトなお仏壇の存在が増えてきた
自宅全体のデザインだけではなく、自宅の広さも問題点の一つになっています。
単身者が暮らすワンルームにおいて、大き目のお仏壇を置くのは現実的ではありません。
また、昔のように一軒家が夢という時代でもなくなりつつあります。
素晴らしいマンションも増えてきたり、利便性を取ってあえて駅近マンションの方が好むという若い人も増えてきています。
そのため、年代問わず部屋の中で使用スペースが限られている世帯では、コンパクトなお仏壇を配置せざるをえないという現実があります。
事実、コンパクト仏壇のシェアは伸びてきており、大手仏壇店でも別コーナーを作るなどして販売に力を入れています。
大型のお仏壇よりも金額が安いこともあって、上置き仏壇をはじめとする小型仏壇のニーズは増えてきているのです。
造りによっては、御本尊を置くと位牌を置く場所が少なくなってしまいますが、それでも多少のスペースはあります。
一見して、お仏壇とは言えないスタイルのものも
新しいデザインのお仏壇の中には、一見してお仏壇とは言えないようなスタイルのものも存在しています。
例えば、写真立てにわずかな仏具が置けるスペースだけといった、非常にコンパクトなデザインのものです。
ここまでくると、宗派や仏像・仏具の選び方などはほとんど意味をなさず、せいぜい線香立てやおりんなどが置けるスペースが確保されている程度の大きさしかありません。
そのような小さなお仏壇の場合、写真の代わりに位牌を置くこともできますが、せいぜい1つが限度といったところですから、複数のご先祖様をお祀りするのは現実的ではありません。
あくまでも一人を供養する場合に限って使えるものと考えてよいでしょう。
家族関係の希薄化や生涯独身世帯の増加により、このような傾向はより強まるものと思われます。
日本全体で見れば決して喜ばしいことではありませんが、価値観の多様化が認められたという意味では、悪いことばかりではないのかもしれませんね。
現代人は「お仏壇を買わない」という選択肢も増えてきた
価値観の多様化は、現代人に「お仏壇を買わない」という選択肢を認めるまでに至りました。
具体的には、日々の祈りの対象が、必ずしもお仏壇にはならなくなったという点です。
実際のところ、どのような習慣が新しく生まれているのでしょうか。
位牌を祈りの対象とする
家族が亡くなった際、お仏壇を購入するのは故人が亡くなってから初めてのお盆を選ぶ方が多いのですが、中には位牌だけをお祀りする方もいらっしゃいます。
位牌と線香立て・おりんなどを購入し、自宅に安置して供養するというスタイルです。
確かに、位牌には戒名が書かれており、祈る対象としては成立しています。
また、仮に金銭面からお仏壇が購入できないという事情をお持ちの家族であれば、お寺や仏壇店も借金してでも買うようにすすめることはできません。
もしそのような方法で購入を検討させるようなことがあった場合、悪徳商法として訴えられる可能性さえあるのです。
こうして、家族の事情が最優先され、ある意味では供養の本質をついた習慣が生まれることになりました。
タンスや棚の上、専用台を購入するなど、スペースさえあればどこにでも安置できますから、習慣化されやすい方法の一つと言えます。
仏像を祈りの対象とする
これに対して、故人と宗教を分けて考える方も目立つようになりました。
仏像自体を購入し安置することで、現世利益や家内安全を祈るというものです。
この解釈なら、そもそも故人がいないご家庭でも仏像を安置することが可能になります。
ただ、そのようなご家庭では、家族が亡くなって位牌が必要になった段階では、お仏壇の購入を検討することになるでしょう。
中には、仏像のそばに位牌を安置して祈るところもあるかもしれませんが、位牌だけを安置する場合に比べるとスペースを取るため、かえって上置き仏壇のような小型のお仏壇を購入した方が安心できるかもしれません。
ばらばらに仏具や仏像を安置していると、地震など有事の際に壊れてしまう可能性もありますから、その点には注意が必要です。
写真を祈りの対象とする
お仏壇の在り方だけでなく、葬式の在り方にも多様化の波が広がってきています。
特に、葬式においてもっとも注目されている形式の一つに「直葬」があります。
かつては、犯罪者・天涯孤独の身など、何か特別な理由がなければどの家庭でも葬式はあげる習慣を持っていたため、直葬という概念を一般家庭が取り入れることはほとんどありませんでした。
しかし、長年続く不景気や無宗教の傾向が広まる中で、「本当にお金をかけた大々的な葬式って必要なのか?」と、疑問に思う人が増えてきました。
こうして、今までの常識に疑いを持つ世代が増えたことにより、お仏壇や位牌といった慣習にとらわれず故人を偲ぶスタイルが、少しずつ市民権を得ています。
それを示す証拠の一つとして「写真立て型仏壇」の存在があります。
位牌ではなく生前の写真を飾り、そこにお花や線香・ろうそくなどを飾ることができる、コンパクトなお仏壇です。
位牌が必要ないということは、必ずしもお墓や菩提寺が必要でないということでもあり、散骨してしまえば残るものは家族の思い出だけです。
素直に故人を想う気持ちだけのシンプルな供養のスタイルが、現代の新たな潮流となって具体化した一例と言えるでしょう。
それでは、お仏壇や位牌は本当に必要ないのか
ここまでまとめてきた内容を考えてみると、現代人の中にはお仏壇・位牌を必要としていない層が一定数存在することが分かります。
それでは、お仏壇や位牌は本当に必要のないものなのでしょうか。
全てはお祀りする側の考え方次第
大前提として、故人を偲ぶにあたり、厳密な作法が国によって法律で定められているわけではありません。
日本国憲法では第20条に信教の自由をかかげており、基本的には個人がどのように供養をしてもかまわないのです。
よって、家としては何らかの宗派に属していたとしても、個人の信教の自由は保障されますから、写真であれ位牌であれ、自分が信仰する信念に沿って供養すればよいことになります。
故人に対する供養の気持ちを、どのようにして具体化するかという考え方の一つとして「お仏壇や位牌」が存在しているのであれば、それを使うかどうかは遺族の考え方次第と言えます。
無宗教で、家族・友人に対する供養さえできればいいなら、お仏壇を持たないという選択肢もある
自分自身が既存の宗教的概念に違和感を持ち、無宗教になった場合は、自分にとって親しかった人や家族に対する供養さえできればいいと考えるかもしれません。
もし、仏教という宗教から離れたいと考えているのであれば、お仏壇を持たないまま供養するという選択肢もあります。
当然、位牌についても持つか持たないかは自分で決められます。
家族・友人のことは大切だが、取り立てて仏教という宗教には興味がないとお考えの方なら、あえて既存の価値観にこだわる必要はないでしょう。
ご先祖様への感謝をしっかりと伝えたいなら、お仏壇を持つ必要がある
とはいえ、故人やご先祖様の供養というものは、言わば「見えないもの」を相手にしていることに変わりはありませんから、まったく仏教から離れて供養することに不安を感じる方も多いのは否めません。
このような場合は、やはり自宅の規模に合ったお仏壇と最低限の仏具を用意し、日々お祈りするという流れが望ましいかもしれません。
ご先祖様の多くは、仏教的価値観を宿したまま現世から旅立っていきました。
そのため、いきなり現代の価値観に即した供養を受けたとしても、戸惑ってしまうかもしれません。
目に見えず、耳で聞こえない相手とのコンタクトを毎日とろうとしているのなら、現世に生きる私たちが先代を尊重することが必要です。
もしお仏壇を買う場合は、位牌とどう向き合うべきか
お仏壇に位牌を安置する場合、多くの方は当然ご先祖様や故人の位牌を安置することになります。
しかし、位牌を安置する場合は、実際のところ「誰に」向けて安置するのかを考えておかなければなりません。
一般的なお仏壇が安置できないお部屋の場合、特に供養する存在に思いをはせることは大切です。
故人をひとくくりで考えると、さかのぼればさかのぼるだけ膨大な数になります。
その全てを供養するためには、必然的にそれなりの大きさを持つお仏壇が求められます。
それでは、お仏壇と位牌の大きさとの関係性を考えたときに、どのくらいの大きさが妥当なのでしょうか。
基本的なことではありますが、現代の事情に照らし合わせてご紹介します。
家族を供養するためだけのお仏壇と位牌
まずは、ご自身の家族を供養するためだけのお仏壇・位牌についてです。
分家の場合や、ご先祖様の存在をあまり気にせずに暮らしてきた方が該当します。
このような場合、少なくとも位牌を安置するためのお仏壇は必要になるでしょうし、家族が亡くなる度に位牌も増えていくことになりますから、小さなタイプのお仏壇であっても複数の位牌が置けるスペースがあるものを選ぶべきでしょう。
ただ、宗派によっては位牌自体が必要なかったり、回出位牌(くりだしいはい)を使ってまとめることを許されている場合がありますから、コンパクトなお仏壇であっても、造りによっては十分スペースが取れる可能性はあります。
ペットを供養するためのお仏壇と位牌
近年では、ペットを供養したあとで丁寧に供養するため、ペット用の位牌を用意する方も増えてきています。
この場合は、ペットが喜ぶようなお仏壇を別に選び、そこに位牌を安置する形になるでしょう。
あるいは、お仏壇は買わずに位牌や写真だけを安置して、お祈りするという選択肢もあります。
人間を相手にする場合に比べると、非常に柔軟性のある対応が可能となるのが、ペット供養の特徴と言えるかもしれません。
ご先祖様・御本尊をお祀りする場合のお仏壇と位牌
ご先祖様や御本尊をお祀りしつつ、位牌を安置する場合は、やはり本格仏壇やそれと同等のスペックを持つ家具調仏壇を準備する必要があるでしょう。
大きさ・広さが十分であれば、御本尊・先祖代々の位牌・家族の位牌を安置できるスペースは確保されているはずです。
また、本格的に供養するのであれば、仏具も本来必要とされるものを備えなければなりませんから、その点にも注意が必要です。
ただ、お寺の方が最低限これだけは必要と話すものだけを揃えておけば、当面は問題ないと言えます。
おわりに
故人やご先祖様を供養する方法は、今なお多様化が進んでいます。
仏壇・仏具専門店も、そのような現代人のニーズをとらえて受け入れられるものを作ろうと必死です。
一部高級仏壇を除いては、お仏壇の種類も本当にさまざまな種類が生まれていますし、これからもそうなるでしょう。
供養の概念は、個々人で変わってきています。
その流れは、時を経るごとにより大きくなっていくはずです。
お仏壇はやっぱり必要ないと考えて処分してしまい、シンボルとして位牌だけを残して供養することを考える方にとっては、何に対して祈るのかという本質が定まっています。
その反面、古来から受け継がれてきた「お仏壇・位牌を祀る意味」が薄れていき、長い目で見れば日本の民族性さえ失わせてしまうかもしれないという危惧さえあります。
故人やご先祖様に対し、供養する気持ちが大切なのは言うまでもありません。
しかし、気持ちは具現化しなければ、ただの気持ちのままで終わってしまいます。
もし、お仏壇を購入せずに、位牌や写真だけで供養することをお考えの方は、自分の目線だけでなく、「亡くなった方々がどのような方だったのか」「亡くなった方々はどのような時代を生きて来たのか」という視点も忘れずに供養を行って欲しいと祈る次第です。
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