外国産が主流も、国産位牌も根強い人気。
国産位牌の産地の違いやそれぞれの特徴と価格について
お仏壇・仏具に限った話ではありませんが、日本人にとって、やはり日本製というのはひとつのブランドになっています。
それくらい、国産信仰は強いものと言っても過言ではありません。
今回のテーマでもある「位牌」もそのひとつで、国産の位牌作りで有名な産地がいくつかあります。
一度はどこかで聞いたことがあるような名前の産地もあれば、その地域独特の名称で呼ばれているものもあります。
それぞれに特徴があるため、特徴を覚えておくことで、値札が付けられた根拠をある程度自分で確認できるでしょう。
今回は、会津・名古屋・高野など、位牌作りで有名な地域の位牌について、その特徴や通常の位牌との違い、一般的な値段などをご紹介します。
国産の位牌には、産地として有名な地域が存在する
まずは、国産の位牌産地として、比較的名前を聞くことが多い地域をいくつかご紹介します。
現代においては、産地とデザインとの間に明確な違いが生じているケースは少なくなってきていますが、産地として認知されている分特徴を色濃く残している位牌もあります。
福島・会津位牌
福島県・会津若松市は、漆器が伝統工芸品として指定されています。
会津の漆塗りは「会津塗り」とも呼ばれ、一説によると鎌倉幕府成立の時期から育まれてきた技術と言われています。
会津位牌の特徴
会津位牌は、指先で表面を丁寧に確認しながら、塗り・磨きの工程を繰り返して光沢を出していきます。
また、手の加え方によって仕上がりが異なり、普通塗仕上げ・上塗り仕上げ・呂色(ろいろ)仕上げという3つの仕上げ方法があります。
普通塗仕上げとは、磨き上げを最小限にとどめた仕上げ方法で、比較的お手頃なものです。
そこから、磨き上げの工程を増やして上塗りし、鏡面のような表面仕上がりを実現したのが上塗り仕上げです。
会津位牌の最高クラスとなるのが呂色仕上げで、炭で磨く工程を繰り返す中で表面を平滑にし、より深い光沢を実現しています。
とことんまで位牌を磨き上げるのが、会津位牌の特徴の一つです。
その他、ちょっと変わったところでは、黒檀・紫檀を使って漆を塗り磨いた唐木漆位牌、土台部分に蒔絵を加えた蒔絵位牌など、亜流となるデザインの位牌も見られます。
会津位牌の値段
会津位牌の値段は、塗りのクラスに応じて金額が分かれるものと考えてよいでしょう。
普通塗仕上げであれば20,000円台から購入することができる店もあり、比較的手ごろです。
上塗り仕上げになると、30,000円台に上昇しますが、型が上等のものであれば50,000円程度の値段になることもあります。
呂色仕上げは、茄子座・框(かまち)といった仏壇下部の装飾も素晴らしく、金箔の使い方もゴージャスですから、モノによっては100,000円以上することも珍しくありません。
また、現代のセンスを反映したデザインのもので、ちょっと変わった色・翡翠(ひすい)色をしているものなどは、古いデザインのものよりも高くなる傾向にあります。
デザインにひかれたとしても、あくまでも供養が目的ですから、予算に応じて無理のないように選びましょう。
京都・京位牌
京都は、仏壇仏具に限らず、日本に古くから伝わるモノづくりの文化を継承している地域の一つです。
そんな京都で作られている位牌にもまた、古来より連綿と受け継がれてきた技術が反映されています。
京位牌の特徴
京位牌として定義される位牌の特徴としては、漆塗りのほか、札板をはじめとする位牌各部を金箔で塗り上げた「ぬぐい粉」が有名です。
こちらは京都独特の技法の一つに数えられ、金箔を貼った上にもう一度箔押し漆を塗り、金粉を蒔いて重厚な輝きを生み出すものです。
その他、受花と呼ばれる札板のすぐ下に、蓮華の花を仕上げる彩色・截金(きりがね)などの技法も美しいものです。
全体的にきらびやかな雰囲気を醸し出しているのが、京位牌の特徴と言えるでしょう。
京位牌の値段
京位牌は、手ごろな型のものであれば、数万円台で手に入ります。
そこに、彩色・截金が加わると、桁が一つ変わってきます。
さらに、ぬぐい粉の製法で作られた全面が金色の位牌は、モノによっては200,000円を超えるものもあります。
贅沢な造りになればなるほど、高額になっていきます。
また、京位牌の特徴の一つに数えられるかもしれませんが、一般的な通販サイトなどで「京位牌」の名を冠する位牌を販売できる機会が、相対的に少ないようです。
その反面、京都市に籍を置くお店では、いくつものお店がサイト上で自社製品を紹介しているため、必ずしも全国的に流通しているとは言えないかもしれません。
和歌山・高野位牌
高野位牌と聞くと、おそらく「真言宗系の位牌なのではないか」と考える方も多いと思います。
しかし、単純に産地が高野であるだけであって、特定の宗派に偏ったデザインというわけではありません。
高野位牌の特徴
もともと、高野位牌が工芸品として製造された背景としては、高野山周辺の村民がお寺に納めるために作り始めたものと言われています。
また、現代に至るまでの間に進化を続けてきた伝統位牌の一つでもあり、白木位牌の状況から、昭和時代に京都から新しい塗りの技術を取り入れ、岡山・大阪といった地域からも新しい技術を取り入れたことで、いい意味で伝統にこだわらない位牌のスタイルを築きました。
商品となっているラインナップが幅広く、可愛らしい蒔絵を入れたもの・シンプルにデザインをまとめたもの・伝統的なデザインのものなど、非常に種類が豊富です。
高野位牌の値段
高野位牌は、他の地域からも技術を取り入れている関係上、比較的デザインの間口が広いという特徴があります。
伝統的な形をしている位牌は200,000円を超えるものもありますが、モダンデザインなら50,000円ほどで手に入ります。
ただ、下の値段は高い傾向にあり、最低クラスでも30,000円台を見込んでおいた方がよいでしょう。
石川・輪島塗位牌
会津位牌に似たルーツを持つ位牌で、こちらも漆塗の伝統工芸で有名な、輪島塗を使った位牌です。
華麗かつ堅牢なデザインは、見る人に「これが位牌なのか」と思わせるほどに美しく、深みのある印象を与えます。
輪島塗位牌の特徴
輪島塗自体が、伝統工芸として確立された美意識の下に成り立っている技術であることから、位牌もまた豪華絢爛な印象を受けるものが多く見られます。
黒地に金をあしらった上塗位牌は、どのデザインも見る人に重厚な印象を与えますし、丁寧な蒔絵があしらわれた蒔絵位牌は、まるで西洋のお墓を思わせるような清廉なデザイン・中国文化を思わせるような赤地に金のデザインなど、見る人の想像力を刺激します。
古来から続く技術でありながら、家具調仏壇・現代仏壇にも通ずるデザインは、見る人の心に深く刻み込まれることでしょう。
輪島塗位牌の値段
輪島塗位牌の値段は、スタートから70,000円前後を見ておく必要があります。
伝統的なデザインの方が高くなる傾向にあり、250,000円を超えるものもあります。
その反面、美しい蒔絵位牌は100,000円台で購入でき、価格もそこまで大幅な変動はないようです。
名古屋・名古屋位牌
名古屋位牌は、名古屋市などで明確に産地の指定等を行っていないため、現状としては「名古屋で作られた位牌」のことを指しています。
しかし、名古屋仏壇とワンセットで考えると、ある程度位牌としての特徴が見えてきます。
名古屋位牌の特徴
通販サイトなどのラインナップを見る限り、名古屋位牌の多くは他の位牌と似たような造りとなっているものが多いようです。
そのため、高野位牌・京位牌などとそん色ないデザインのものが、名古屋位牌として売られているのを見かけます。
しかし、地元の仏壇店で名古屋位牌として認識されているものはまちまちであり、浄土真宗で使うことを想定した「回出(くりだし)位牌」のことを指すものと理解している現地のお店もあります。
名古屋仏壇に安置する位牌として、回出位牌を用いるのが正式であるとの考え方から、そのように認識している仏壇店のスタッフは少なくないようです。
このような認識の差が生じているのは、名古屋市で「名古屋位牌」の定義を設けていないことが一因であり、地元でも総じてそこまでこだわりがないものと推察されます。
よって、現状としては「名古屋で製造された位牌」のことを名古屋位牌と認識しておけば、支障はないものと思われます。
ただ、産地情報が載っていなければ、業者でも分別は難しいという意見もあるようです。
名古屋位牌の値段
厳密に【回出位牌=名古屋位牌】と定義してしまうと、名古屋仏壇のカテゴリで判別ができないため、通販サイトで名古屋位牌として売られているものの金額をまとめてみました。
地名を冠する他の位牌に比べると比較的安価であり、下部の形に応じて金額が変動する形となります。
京中台・千倉座のようなスタンダードなデザインであれば、10,000~30,000円台で購入できますが、櫛型五重座・出高欄などは50,000~100,000円台ほどになります。
ちなみに、名古屋位牌として回出位牌を紹介している例はほとんど見られないため、実際に購入する場合は、型にこだわらず購入して差し支えないでしょう。
伝統的な国産位牌とそれ以外の位牌との違い
ここまで、伝統的な国産位牌について、いくつか詳細をご紹介してきました。
実際のところ、古来から続く技術を継承しているものもあれば、地名だけが独り歩きしているものもあり、海外産の位牌との違いをはっきり区別しきれないデザインがあるのは否めません。
残念なことに、素人には100%本物・偽物を見極める力はありません。
そこで、国産位牌とそれ以外の位牌とを見比べ、国産位牌を選ぶために、それぞれの違いを「ある程度見極める」方法を以下にまとめてみました。
値段は手堅いが、裏切ることもある
国産・海外産を手っ取り早く見極められるのは「値段」です。
これは動かしがたい事実であり、やはり良いものはそれ相応の値段で売らなければ利益が出ないため、迷ったら価格を取っ掛かりにするのは正しい判断です。
ただ、ここからが本題なのですが、価格「だけ」で選ぶのも問題です。
通販サイトでは、載せられる情報に限りがあり、良心的なサイトは実物を見せられない分正確な情報・価格で勝負しています。
しかし、悪質なサイトは情報を盛る・騙すといったことを平気で行いますし、実店舗では比較対象となる店舗が少ない分だけ、高値で購入してしまうケースも残念ながら存在しています。
お仏壇の場合は、工程・製法が厳密に決められており、その分値段にも反映されているため、多少なりとも分かりやすい部分があります。
しかし、位牌は産地表示を義務化しているところばかりではありませんから、どうしても特徴がつかめないものも出てきてしまいます。
良いものを探したければ、産地にこだわらず実際に自分でモノを見て造りを確認する、各種通販サイトを比較するなどの方法が確実です。
品質・相場を確認することが、騙されないための第一歩と考えておきましょう。
オーダーメイドを選ぶ
産地にこだわりを持って選ぶのも大切ですが、すでに素材の出所が分かっているものを選べば、不安を感じることはありません。
そこで、あらかじめ素材を見て選べる「オーダーメイド」という方法もあります。
主に素材となる木材は海外製ですが、手をかけて仕上げるのは日本の職人です。
また、戒名を金字・銀字で書く・掘るなどの選択肢もあります。
塗装方法も、漆・ウレタンなどから選ぶことができ、自ら工法を選べる点では一般的な国産位牌よりも贅沢に感じられるかもしれません。
自分の手で本当に欲しいものを手に入れたいと考える方は、一度選択肢に加えてみるのもよいでしょう。
海外製・国産にこだわらず、品質重視で考える
身もふたもない考え方ですが、海外製である・国産であるという考え方を脇に置き、自分の目の前にあるものをチェックして、品質が良いと感じたものを選ぶのも一つの方法です。
より良質な位牌を選ぶためには、選ぶ側にも見識が問われるため、逆に比較検討する手間を省くことも大切です。
そもそも、位牌にこだわる理由を考えたときに、こだわるに足る理由を持っているのかどうか、今一度検討の余地はあります。
供養にとって重要なことは、位牌の質ではなく、位牌を拝む自らの心根にあるからです。
もちろん、安値であればどんな商品でも将来が心配になるものです。
しかし、形あるものはいつか朽ちてゆく宿命にあるわけですから、こだわりがないなら産地にこだわらず、丈夫なものを選ぶというのも一つの方法です。
おわりに
国産位牌の産地として有名なところは、長い歴史の中で独特の美学を貫いてきました。
その美しさ・きらびやかさを求める心は、日本人のDNAに組み込まれた、誇るべき感性の一つです。
しかし、現代ではその美しさを理解できる人は少なくなってきており、業者の側でも認識に違いが生まれているものもあります。
残念なことではありますが、それだけ日本人が「供養の本質」に近づいているとも考えられます。
位牌を用意するのはご先祖様を畏れ敬うためであり、そのために必要な依代として位牌やお仏壇が機能しています。
その本質を失わずにいれば、何を選んでもご先祖様は喜んでくれるのかもしれませんね。
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