何かと小物仏具として使われるロウソク
火を灯す意味やロウソクの種類や特徴について知っておこう

  • 2019.04.15
  • 2020.04.06

仏具 仏事などの解説

ロウソクの火は、人の心を和ませてくれます。
それは古来から人間が感じてきた共通の感情と言えるかもしれません。

人々はロウソクを闇夜の明かりに用いたり、亡くなった人を偲ぶ思いで火を灯したりしていました。
現代でも、セレモニーの場やお仏壇における毎日のお勤めなどで、ロウソクに火を灯す習慣は日本人に深く根付いています。

しかし、ロウソクの火には仏教的な意味合いも含まれており、単なる明かりや線香に火を点けるためだけの手段ではありません。
今回は、お仏壇でロウソクに火を灯す意味やマナー・使われるロウソクの種類についてご紹介します。

お仏壇・仏教世界においてロウソクが持つ意味

そもそも、お仏壇にロウソクの火を捧げることには、仏教的にどのような意味があるのでしょうか。
地域によって多少の違いこそありますが、多くの場合はきちんとした意味があるようです。

仏教における「火」は、貴重なものだった

日本国内において、火を使った行事は多いものです。
精霊流し・大文字の送り火など、お盆に戻って来た先祖を再び浄土に送ることを目的とした伝統行事は有名です。

日本人にとって火というものは、浄土と現世に生きる人々とをつなぐ架け橋のような役割を担っています。
しかし、仏教世界で考えてみると、火にはまた違った意味合いがあります。

仏教において、ロウソクなどに灯す火のことは「灯明」と呼ばれ、御仏の智慧と慈悲を表すものです。
昔は「お仏壇にお光をあげる」などとも言われ、御仏の光明をお授けいただくといった意味合いで火が灯されていました。

火は自分の邪念を払う意味で用いられる

仏教におけるロウソクの火は、太さ・長さ・火の大きさにかかわらず、本質的には平等のものと考えます。

これは、裕福な人・貧しい人・健康な人・病弱な人など境遇は様々でも、持つべきものは「火のように明光赫赫(めいこうかくかく)たるべき智慧である」との考えから、多くのお寺でそのように言い伝えられてきました。

火によって自らの邪念・煩悩があらわになると考えられ、それを払い去る智慧のシンボルとして、ロウソクの火は用いられてきたのです。

ロウソクの火は、人間の命を表すこともある

お仏壇に使うロウソクの形として想像することが多いのはおそらく、綿糸を芯とし、その周りにろうを円柱型に固めて作ったものでしょう。

基本的な形状こそ同じですが、一本一本のロウソクを比較したとき、太さ・長さ・素材などが違います。
その違いを人間になぞらえたり、寿命の長さを示すのに用いたりします。

昔話や落語などでも、ロウソクの火が消えたとき命が尽きる・寿命を延ばすためにロウソクを用意するなど、ロウソクにまつわるお話は意外と多いものです。

仏教では、ロウソクの火をお仏壇に捧げることで、亡くなった方が迷うことなく浄土に向かうための「道しるべ」になってくれるものと考えられています。
日本において、ロウソクの火はご先祖様・御仏も含め「命そのもの」を指していると言えるかもしれません。

お仏壇で使うロウソクの種類について

お仏壇・仏教で用いられるロウソクについて、基本的な知識が分かったところで、実際にお仏壇で使うロウソクの種類についてご紹介します。
お仏壇用のロウソクを選ぶ場合、いくつかの観点がありますから、順を追ってご紹介します。

素材からロウソクを選ぶ

まずは、ロウソクを作るのに用いられている素材に焦点を当てて、ロウソクの種類を紹介していきましょう。
基本的には和ロウソク・洋ロウソクに大別されますが、現代ならではのロウソクもあります。

和ロウソク

主に植物油が原料となるロウソクで、い草・こよりが芯として用いられます。
油の原料としては、ハゼの実・バーム油・なたね油などが使われている製品が多いようです。

植物油は油煙が少なく、お仏壇やお部屋が汚れにくいのが特徴です。
万一汚れてしまったとしても、拭き取りやすいので安心です。

また、ロウが垂れにくいことも特徴の一つで、溶けたロウを芯が吸い取ってくれます。
火持ちも良いので長く使える点もメリットです。

和ロウソクは、現代では防災用や照明などの普段使いに使われることが少ないため、洋ロウソクに比べてお値段も多少高くなります。
また、職人手作りの製品が多く、手が込んでいる分価格は高めで、安いものでも2本で1,000円以上と比較的高値です。

形は上に広がっていく「碇型(いかりがた)」と呼ばれるものが多く、法要などの席で用いられることが多いようです。

洋ロウソク

一般的に広く流通しているロウソクです。
お仏壇で普段のお勤めに用いられるロウソクは、主にこのタイプになるでしょう。

芯には綿糸が、ロウには主に石油由来のパラフィン・牛脂などを素材とするステアリンが用いられます。

パラフィンはロウソクの他、クレヨンなどに用いられる素材です。
ステアリンを使ったロウソクは、すすを出さず光も強いことで有名です。

洋ロウソクは棒型が多く、日本だけでなく世界中で用いられているデザインで、値段も安価です。
100均ショップなどでも売られていることから、どちらかと言うと気軽に手に入れやすいのは、洋ロウソクの方でしょう。

近年では、天然ガスを液体化したLNG(リキッドナチュラルガス)を材料にしたものも売られています。

LEDロウソク(電気ロウソク)

電力が普及した現代では、ロウソクの火に代わって電気が用いられるようになりました。
その代表的な商品が「LEDロウソク」です。

お仏壇におけるロウソクの取り扱いは、気を付けないと大惨事につながるおそれがあります。

特に、高齢者が火の始末を忘れてしまったり、ちょっとした不注意で火が畳などに燃え広がってしまったりすると、消火にも手間取りますし、場合によってはお仏壇自体を買い換えなければなりません。

しかし、LEDロウソクを使えば、火が何らかの理由でどこかに燃え移る心配がありませんから、火の扱いに不安を感じる肩であっても安心して使えます。
また、一般的なロウソクと違って煙も出ませんから、煙が苦手な方にもおすすめです。

種類としては、乾電池で動くものとコードがついているものとがあります。
ただ、お仏壇で使うのであれば、乾電池式の方が勝手が良いでしょう。

電気ロウソクは、ロウソクのみで売られている商品と、ロウソク立てがセットになったようなデザインの商品とがあります。
お仏壇の雰囲気に合わせて、自分に合ったものを選びましょう。

高性能な商品の中には、10分程度で自動消灯する機能が備わっているものもありますから、消し忘れが気になる人は検討してみてくださいね。

色や形からロウソクを選ぶ

次に、色や形の面からロウソクを選ぶとしたら、どのような種類があるのかをご紹介します。
色については主に白と赤・形状としては棒型と碇(いかり)型に分かれます。

白色のロウソク

毎日のお勤め・月参りで用いられるロウソクです。
また、葬儀や一周忌・三回忌などの年忌法要などでも用いられます。

要するに、普段使いのロウソクとして用いられているのが白色です。

赤色のロウソク

浄土真宗では鶴亀の燭台(しょくだい)に立てるロウソクの色としておなじみですが、こちらは若干宗派によって使う場面が異なります。
浄土真宗では七回忌以降の年忌・彼岸・お盆に用いられ、基本的にはおめでたい場面で用いられるロウソクです。

他の宗派では、それぞれで使用の有無が異なりますが、法要・正月・仏前結婚式などの際に使われることが多いようです。

棒型と碇型の違い

棒型は、一般的なロウソクの形状で、和洋問わず用いられる形状です。
これに対して碇型は、緩やかに沿った形が特徴的です。

上に行くにつれて太くなっていき、火が点いているところを見ると、何となくたいまつに似た形になっています。
お寺によって碇型を使うか、棒型を使うかが分かれるようですが、いずれにせよ普段のお勤めレベルであれば特に形を気にする必要はありません。

故人・遺族の嗜好からロウソクを選ぶ

最後に、故人・遺族側の好みでロウソクを選ぶ場合、どのような種類があるのかをご紹介します。
目で見て楽しめたり、故人が好きだったものをかたどったりしたロウソクが人気のようです。

絵ロウソク

ロウソクのロウ部分に美しい絵が描かれているものを言います。
特徴としては、絵がなくなってしまうのがもったいないので、極力火を点けずに飾るという点でしょう。

普段使いにはせず、正月・お盆などの時期に火を点けるロウソクとなります。
お花が枯れていて用意できない場合や、そもそもお花を飾るスペースがない場合などに、お花代わりに用いられているケースもあるようです。

絵の種類としては、桜や菊・紅葉のように日本の美しい花や植物を描いたものが多く、主にギフト商品として売られています。

「故人の好きなもの」ロウソク

亡くなった家族が昔好きだった食べ物・飲み物などをかたどったロウソクです。
お寿司やお菓子・お茶やお酒など、実に幅広いラインナップが用意されています。

見た目もかなりリアルで、火を点けるとロウが溶けるにつれて隠れていた部分が見えるようになっているなど、遊び心も満載です。
お仏壇はもちろん、お墓参りなどで食べ物をお供えする代わりに火を点けるという使い方もできます。

季節のロウソク

お盆やお彼岸など、仏事に必要な飾り物やお菓子などをかたどったロウソクも出ています。
ナスやキュウリを使って作る精霊馬や、お住まいの環境によっては難しい迎え火・送り火、さらには大福やお迎え団子など、種類は多彩です。

実際に用意するには手間がかかるし、飾る場所・火を焚く場所がないという方でも、手軽に用意できるものとして人気です。

お菓子などは、種類によっては子どもが嫌うものもありますから、無駄に残さないためにキャンドルを用意するというご家庭も、今後は増えていくのかもしれません。

ロウソクの取り扱い方・マナーをおさらい

ここまで、多種多様なロウソクの種類についてご紹介してきました。
ここからは、お仏壇で使うロウソクの取り扱い方やマナーなどについて、いくつかご紹介していきます。

ロウソクの火を消すときは、手や指・道具を使って消すこと

現代でもよく言われることですが、お仏壇で使うロウソクの火は、基本的に吹き消してはいけないものです。
誕生日にロウソクを消す習慣があると、どうしても吹き消してしまいたくなるものですが、仏教では人間の息を「穢れ」や「不浄」のものとします。

ロウソクで火を消すことは、そのような人間の息をお仏壇に向かって吹きかけることになりますから、大変失礼な行為とされるのです。

それでは、具体的にはどのような消し方をするのでしょうか。
以下に、主な方法をご紹介します。

手であおぐ

手のひらを上下に動かし、ロウソクの火をあおぐようにして消します。
手のひらの動かし方ですが、大きく動かすよりも、小刻みに動かした方が消しやすいでしょう。

指でなでる

親指と人差し指を使い、ロウソクの芯の下からそっとなでるようにして火を消します。
マッチをもみ消すニュアンスが近いでしょう。

芯の一番下は、火が点いている上部とは違ってそれほど熱くないため、コツをつかめば一瞬で火が消えます。
また、事前に指は水で湿らせておきましょう。

しかし、ゆっくり消そうとすると熱いですし、失敗するとやけどをするおそれもありますから、手であおいだり道具を使った方が安全かもしれません。

ロウソク消しや仏扇(ぶっせん)を使って消す

お仏壇でロウソクの火を日常的に点けたり消したりするのなら、専用の道具を使った方がやりやすいでしょう。
代表的なものは、ロウソク消し・仏扇になります。

ロウソク消しは、ひしゃくを小さくしたような形・小さな鈴のような形をしており、ロウソクの火の上に被せて火を消します。
仏扇は、小さなうちわ状の形をしていて、こちらは火をあおいで消します。

どちらを選んでも問題ありませんが、強いて言えば風を使わず、周囲にあるものを吹き飛ばすおそれのないロウソク消しの方が安全でしょう。

ロウソクは水と反応すると危ない

ロウソクは、環境の変化に敏感な仏具です。
劣化すると、ヒビが入ってしまったり、芯の部分が湿って火が点かなくなってしまうことも珍しくありません。

そのため、使わないロウソクは直射日光を避け、冷暗所で保管することが基本になります。

また、ロウソクを立てるのに使う火立を掃除した場合は、水分は残らず拭き取りましょう。
意外かもしれませんが、ロウソクと水分とが反応すると、思わぬ事故を引き起こす可能性があります。

ロウが溶けたものと水分とが反応すると、火が点いた芯が飛び散ります。
お仏壇は木を材料としていますし、日本の家屋ではふすまや畳など、燃えやすいものが身近にありますから、大規模な火災に発展しても不思議ではありません。

間違っても、水でロウソクを消そうとしたり、十分に水が拭き取られていない火立を使ったりしないようにしましょう。

和ロウソクを日常的に使用するなら注意が必要

和ロウソクは、火の明るさが強いというメリットがある反面、火の扱いにちょっと手間がかかるというデメリットもあるのです。
具体的には「芯切(しんぎり)」という作業が必要になります。

和ロウソクは、洋ロウソクに比べると大型のものが多く、その分芯が太いため残りやすいという特徴があります。
問題なのは、炭になった芯が残ったままロウソクが燃え進んでいくと、かなり炎の勢いが強くなってしまうことです。

そのため、一定時間燃え進んだところで、火箸や芯切バサミといった道具を使い、芯の長さを調節して炎の大きさを加減しなければなりません。
慣れるまでに手間がかかるため、和ロウソクを使いたい方は、あまり火力に差が生じない小さめのサイズを選ぶとよいでしょう。

おわりに

ロウソクの火は、人の心を明るく照らしてくれる大切なものとして、仏教で重宝されてきました。
また、ご先祖様や御仏とつながるためのツールとして、ロウソクの火が用いられてきたという経緯もあります。

時代を経て、奇抜なデザイン・LEDのような新しい技術などが取り入れられたロウソクが発売されるようになり、ロウソクはより現代的なニーズを満たすようになってきました。

今後もその傾向は続くと思われますが、本質的な意味は変わらないまま、ロウソクは日本のお仏壇に灯され続けることでしょう。

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  • 公開日:2019.04.15
  • 更新日:2020.04.06

カテゴリ:仏具, 仏事などの解説

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